第15話 ルクスVSナハト

俺はナハトと戦う為に戦う場所を決める。


 「どこがいい? 選ばせてやるよ」


 ハンデは必要だ。簡単に勝ってしまっては面白くない。


 「誰もいない森がいいわ。見つかったら怒られそうだし、何より邪魔が入らなくてすむわ」


 「じゃあ移動するか」


 チートスキル発動

 刹那の神速ネオテレポーテーション


 俺はナハトごと森へと移動した。


 「ルールは無しでいいよな。どちらかが死ぬまで殺し合おうぜ」


 そうだ、ルールなんていらない。


 殺して殺して快楽を得る。それが今俺が一番望むこと。


 「ええ、最高の夜にしましょう。日も暮れて来た頃合いだしね。さあ始めましょう」


 俺はナハトに婆さんから教わった具現化魔法で剣を作り、その上に魔力を重ねる。


 「本気じゃないのね。残念だわ」


 「本気でやったら簡単に殺してしまうからな」


 「腹立つ言い方。貴方絶対殺す」


 俺はナハトの剣に自分の剣をぶつける。


 ガキィン、ガキィン、ガキィン。


 剣と剣がぶつかる音がする。俺の剣がナハトの剣に耐えきれなく、剣が折れる。


 ナハトは俺に向かって狂気の笑顔で襲いかかってくる。


 スキル発動

 伸縮剣アウスデーヌングソード


 ナハトの剣が急に伸び俺の胸を貫こうとする。


 チートスキル発動

 固有結界フリーエリア


 駄目だ。相手が弱すぎる、もっと強者じゃないと駄目なんだ。


 「何これ……固有結界⁉ あなた一体何者」


 「冥土の土産に教えてやるよ。俺は転生者だ。最強なんだ」


 俺の悲しそうな表情を見てナハトは何かを悟った。


 「そう。転生者って聞いたことあるわ。妹が言ってた、神話に出てくるって。貴方強者と本気の戦いをしたいのね」


 「ああ、お前では力不足だ」


 「そうみたい。なら死ぬ前にいいこと一つ教えてあげる。伝説の島の住人は強者ばかりよ。私の生まれ故郷にある本に書いてあったもの。私も憧れた」


 「情報ありがとう」


 ああナハト本当にありがとう。俺を少しでも理解してくれて、嬉しかったよ。


 「私は魔法の才能がなかったの。でも妹は違う、妹は魔法の天才。だから出来れば守ってあげて欲しい。本心はいい子だから」


 誰の事を言っているんだ。


 チートスキル発動

 完全把握パーフェクトツィンケル


 ああナハトと一緒にいたフードの少女が妹なのか。

 

 名前が分からない⁉ あの時と同じだ、ファーリーが殺された時と。ジャミングされている。俺のスキルを防御している。


 ははっ……強い。少なくともナハトよりは圧倒的だ。

 

 「ああ約束守ってやるよ。多分な」


 「ありがとう。悔いはないわ、私は所詮一般人にしか勝てない弱い殺人鬼だもの」


 「抹消」


 俺の『抹消』という言葉と同時にナハトの存在が消失する。


 記憶から消えた訳ではない。所謂死んだのだ。


 ナハトの宝石が俺に継承される。俺の中にナハトの記憶がなだれ込んで来た。


 俺は頭が破裂しそうな痛みを訴えその場に倒れ込む。


 

 どこだここは? 俺は死んだのか。


 って……いや一度もう死んでるか。


 ナハトの子供の頃の記憶が俺の目の前に映し出される。


 『ママは私を見てくれない。才能のない私を。いつも気にかけるのは才能のある妹のイドラ。でもしょうがないよね』


 ナハトの記憶が俺の中になだれ込んで来た。


 食事シーン、睡眠中の寝顔、母親から注目を集めるため誰かを殺すナハト。


 色々なナハトが俺の目の前に映し出された。


 そして場面が変わり、ナハトとイドラに母親が本を読み聞かせている。


 『昔々強大な魔力を持つ一族が存在しました。しかし、人間達から迫害され小さな国で暮らしていました』


 『何で迫害されたの?』


 『強大すぎる力は恐れる事が必然なのよ』


 『可哀想だね』


 『ある時人間側が戦争を始めました。その戦争に巻き込まれた一族は人間を滅ぼそうとしました。しかし、神がそれを許しませんでした。神は強大な魔力を持つ一族のポテンシャルを恐れ、アヴァロンという島に閉じ込めました。そして鍵は七つの宝石となって、各地に散りばめられましたとさ』


 ここでナハトの記憶が俺の目の前で途切れる。


 そうか七つの宝石は神によって創られたのか。だとすれば、神がこの世界に存在する理由になる。


 俺は強者と戦える。神と戦えるかもしれない。


 俺は目が覚めるとまだ森の中にいた。


 俺の首には宝石が首飾りとしてさげられていた。


 その宝石はナハトから継承した宝石だった。

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