水無月と雨

卯佐見 魁音

雨と少女

~♪


鼻歌が聞こえる。


ベランダから外を見る。

家の前には線路があって、線路沿いを青い髪の少女が歩いている。


ここからでも少女の笑顔がよく見える。

今にも踊りだしそうな程の笑顔だ。



この辺りは電車が通ってないととても静かで、子どもの元気な声なんかはよく聞こえてくる。


そういえばこの前も少女と、その友達(だと思う)の茶髪の子の話し声が聞こえてきた。



自分の子どもの頃を思い出し、少女にそれを重ね合わせる。


いつの間にか空が暗くなってきた。

今日は雨が降るって、天気予報で言っていたな。


予報の通り、雨が降り始めた。


少女の歌声が止む。

慌てて傘をさしている。


そして、不思議なことに、傘をさした少女は足を止めた。


どうやら空を眺めているみたいだ。


自分も空を見上げてみる。


当然そこには雨雲。

これといって気になるものは何もない。


しかし少女は曇り空を見つめたまま動かない。


少女はいったい何を考えているのだろう。

子どものやることはよくわからない。


~♪


雨音交じりの鼻歌が聞こえる。


少女はまた歩き出していた。

雨にも負けず、それはもう楽しそうに線路沿いを歩いていった。

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水無月と雨 卯佐見 魁音 @kaine_usami

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