200万PV達成記念番外編~第3の選択肢~
未来の選択
人は何かを選んで生きている。
何か1つを追い求める人もいれば、どちらも手に入れようとして失敗する人、両方とも手に入れてしまう恵まれた人もいる。
それと同時に人は常に選ばれて生きている。
生命の誕生の時点で数億の中から選ばれているのだ。
……コレ下ネタじゃないよね?
選ぶという事は他の選択肢を切り捨てる事であり、選ばれなかったという事は切り捨てられたという事である。
そして、ここにも切り捨てられ続けている男がいた。
「ちっくしょう!またお祈りかよぉぉぉおおおおおお!!」
数多の世界を救い続け、その
大学では少しはなじんでいると思っていたようだが、現実はそこまで甘くは無かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ついに迎えた大学の入学式。
高卒認定のために勉強し、異世界行って世界を救って帰って来て。
大学受験のために勉強し……てからはしばらく異世界呼ばれなかったんだっけ。
きっと神様も俺の受験を応援してくれたんだろう。
その
「一緒にテニスしませんかー?」
「みんなで楽しくバーベキューしませんかー?」
「同志求む!
最初のはテニスサークル。
他にテニス同好会とテニス愛好会があるけど、みんな日焼けしていない所を見るに
二番目はアウトドアサークル。
足元が全員スニーカーな時点でお察しである。
バーベキューでいただくのは食用肉だけではなさそうだ。(偏見です。)
最後のわかりにくいのはアイドル研究会だそうだ。
10人ほどで一斉にオタ芸を披露しているのは見事だが、誰も寄り付いていない。
多分真ん中のアイドル役と思われる、ジンメンカメムシみたいな顔の女の子はオタサーの姫ってやつだろうか。
ちなみに俺の周りも誰も寄り付いていない。新入生なのに。
念願の大学に入学したものの、戸籍上24歳になっている俺に大学生活スタートダッシュは難しかったようだ。
「あの……入学式ってどこでやるかわかりますか?」
初々しい美少女の新入生である。
こんな子に話しかけられたら舞い上がって答えられるものも答えられないのではなかろうか。
しかし、俺も初々しい(?)新入生なのである。
「ごめん、俺も新入生だからよくわかんないんだ。」
「え゛っ!?」
なんだそのリアクションは!美少女が「え」に濁点とかつけんな!
確かに体感年齢はそろそろ40歳だけど、見た目は24歳のはずだぞ!
「すげぇオッサンが新入生とか言ってて草。侵入生の間違いじゃねーのかよ」
「そんな事より入学式の会場案内するからさ、俺らのサークル入らない?」
「君マジ即戦力、もうみんなギンギンで頑張っちゃうよ!」
なんのサークルかわからないけどこいつら埋めておこう。
文字ネタとか使われてもアニメ化の時に使えないだろうが!(しません)
近くの
ちなみに園芸サークルの人が被っていた花の被り物を被せてみた。
「場所お借りしてすいません。ちなみに野菜とかも育てたりしてます?」
異世界無双と言えば農業!娯楽!食事!
だがしかしっ!この中で雑学レベルじゃ太刀打ちできないのが農業!農業なめんな!
灰撒けー貝殻撒けー腐葉土撒けーう〇こ撒けー豆撒けノーフォークじゃーって農民殺す気かああああああ!
現地の菌で
「あ、いや、そこまで本格的な活動はしてなくてですね……」
俺の農業に対する情熱が少し漏れていたのか、若干引いているようである。
決してナチュラルに人を埋めたり異世界とか漏らした俺自身を見て引いているわけではない!と思いたい!
それとも村人全滅のくだりだろうか。ちょっと気を付けるウホ。
「野菜って言っても枝豆とか育てて飲み会したりするだけなので……」
「何それ最高のおつまみウホ!」
枝豆は収穫直後から急速に味が落ちてゆく。
冷凍食品の枝豆はそれを防ぐためにすぐさま茹でて冷凍しているのだ。
畑で収穫直後に塩ゆでした枝豆のうまさは何物にも代えがたいのである。
これは筆者が会社の花壇で枝豆を育てて昼休みに茹でた経験から来るものなので間違いない!
(何やってんだこいつと言うツッコミは受け付けません。)
「いや、すいません、女の子がおびえてるのでご遠慮ください……」
早速
涙が出ちゃう。だって
なんか変なルビがついてるけど気にしない。
これでも体感では何十年とあこがれた大学生活なのだ。
サークルに入りバカ騒ぎとかしたいじゃないか。
「ま、まあとりあえず入学式にいかなきゃね。うん。」
いつの間にかいなくなっていた先ほどの美少女ではないが、俺も講堂に向かわなければならない。
こうして俺の大学生活は不安なスタートとなるのであった。
ちなみにこの時の美少女と再会することは無かった模様。
講義は真面目に受け、サークル見学ではメンバーをフリーズさせ、人目につかない場所で異空間倉庫から取り出したボッチ飯。
そして時々異世界召喚。
……あれ?これ完全に大学生活失敗してない?
それでも、それでも俺は諦めなかった。
教授のお手伝いをしたりと、少しでも人間社会に馴染めるように努力したウホ。
ちょっと講義実習中邪魔だった資材の移動をしたところ、ゴリさんと呼ばれるようになった。
中身の詰まった
ちなみに理由は後述するが、大学の学部は建築学部である。
※蛇籠(じゃかご)※
金網で作った箱。石を詰めて河川の護岸工事などに使う。普通石を詰めた後は動かさないし動かせない。
あだ名がゴリさんになってからは生活が変わったように思う。
一緒に食事する友人も出来た。
料理男子的な話になった時、日替わりで弁当を用意する料理選手権なんかも開催した。
取り出した重箱を見てどこから出したと驚かれ、見た目の豪華さに驚かれ、味の普通さにがっかりされた。
「ゴリさんの見た目で繊細な盛り付けの豪華な料理が出てくるのも驚いたけど、なんでこんなおいしそうな見た目で普通においしいレベルなのか……脳が混乱する!」
酷い言いようである。
「わかる!なんか料理技術を無駄にフル活用してレトルト食品を詰め替えたような感じだよね!」
ものすごく酷い言いようである。
「文句言うなら食べるなウホ!モンクのスキルでぼっこぼっこにするウホ!」
酷すぎるおやじギャグのせいで、ニックネームが異世界ゴリおじさんに変わってしまった。
本気でものすごく酷い扱いである。
というか版権の問題に引っ掛からないか少し心配である。
あれ面白いけどね。
異世界で科学?何それ魔力使う?みたいな生活を送っていたためか、大学の学部はかなり悩んだ。
科学や医療が魔法ゴリ押しで何とかなる異世界、そこでも使える知識として迷ったのが農学部と建築学部だ。
農業は何度も失敗して学んだ俺にはpH調整魔法も土壌分析魔法もある。
錬金術で種から品種改良し、成長促進魔法や肥料化魔法も使えば問題はない。
建設も魔法で強度を増したり、自由に形状変更させる事で問題はない……わけではなかった。
そう、魔法のみで出来るのは欠陥豆腐建築という問題があったのだ!
もちろんパルテノン神殿風やサグラダファミリア風に外見を整えたりすることもできる。
むしろ異世界では一流建築扱いになるだろう。
しかし、適当に作るととにかく住みづらくなってしまうのだ。
なんという事でしょう。
適当に廊下を中心に左右対称に部屋を作り、トイレやお風呂をそれぞれ割り振って加工したシンプルな作りの家に。
廊下や換気口を通じて全部屋に鳴り響く排泄音や、お風呂の全力歌唱が生活に騒音をもたらします。
そう、明らかな欠陥住宅になってしまったのです。
そこで大学では建築学部を選択したのだった。
ナチュラルに異世界転移を前提とした人生設計になっている事には気づいていないまま、大学生活を送るゴリラであった。
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