第24話 きっと来る

 さて、結局手ぶらで帰ることになってしまった。

 せっかく色々教えてくれた宿屋の幼女に申し訳ない。

 とりあえず宿は3日とったけど、特にやることが無い。


 速攻で魔王倒して男の娘と帰ろうかとも思うが、これも彼の人生経験かと思うとむげに出来ない。

 これも貧乏性の1つなのかなとか思いながら歩いていると、背後から敵意を持った人の気配を感じる。

 さっき出した宝石が原因だろうか。


 このまま宿屋に帰ると面倒なことになりそうだから、とりあえず人気のない方に進む。

 細い路地を進んでいくと、裏通りについた。


 ……いや、普通に人通りあるけどね。

 この街は碁盤状に整備されているようで、人気の無いところは街壁そばまで行かないと無いようだ。


 めんどくさい


 仕方なく街壁そばまで歩き続けると、人気の無い薄暗い場所までやって来た。

 街壁で影になるのか、じめじめして石畳や建物の壁にコケが生えている。


「そろそろ出て来たらどうだ?」


 後を振り向きながらついてきている2人に語りかける。

 1度言ってみたかった台詞なのは内緒である。



 ……誰も出て来ない。


 人の気配はある、敵意も感じる、探知魔法でも引っかかっている。


「いや、わかってるんだから出て来いよ!

 なんか勘違いした自意識過剰の痛い人みたいじゃねえか!」


 ……まだ出て来ない。


 も う め ん ど く さ い



 後をつけていた2人のうち、片方の後に回り込んで首根っこを捕まえる。

 元の場所に戻ると、もう1人が動揺しているのが感じられた。

 捕まえた方は何がおこったのか理解できていないようだ。


「ねえ、何であとつけてきたの?

 俺に何か用事?何でさっき出て来なかったの?腕折っていい?」


「…えっ?あ?うえっ!?」


 超混乱してる!面白いね!

 返事が無いのでとりあえず1本。


「えぎぃ!!」


「ほら、もう1人も出ておいで。

 出ないと目玉をほじくるぞ?」


 性格まっくろく○すけ!

 なんちゃって。


「わ、わかった!やめてくれ、全部話すから――くぎぃ!」


 出て来た方の後に回り込み、腕を折りつつ1人目のそばに転がした。


「さあ、何故あとをつけたのか教えて貰おうか。」


 腕を押さえて涙目で後ずさりする2人。

 その後にまた回り込む。


「ねえ、なんで?なんであとつけてきたの?」


 超高速でグルグルと回りながら問い詰める。

 1人かごめかごめ状態である。


「受付のやつに言われたんだ!

 宝石をスリ盗って持ってきたら高く買ってやるって!」


「やってこないとスリだって衛兵に突き出すって言うから!仕方なくなんだよお!」


 あっけなくゲロったな。

 よし、褒美に装備してやろう!


 そう伝えたときのスリA&Bは眉間にシワを寄せ、口は半開き。

 まさに『何言ってんだコイツ』と言いたげな表情だった。

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