第10話 こぐまちゃん、すねてしまう

クマロニア行の貨物船の甲板におおぐまちゃんとこぐまちゃんはいた。クマランドからクマロニアまで。船で丸1日。出港してから1時間ほどしたところだ。船に乗るのはふたりとも初めてだったので外を見に出てきた。

「うわぁきもちいいー。」

「こんなに広いんだねぇ、海って。」

ふたりで海を見ているところへ制服を着た大きなくまがやってきた。大柄なおおくまちゃんよりも更に大きな体格だ。

「船長のきょぐまといいます。ようこそ私の船に。広いでしょ海は。船に揺られているときが一番落ち着きます。」

正直なところふたりは船酔いで気持ち悪くなってきていた。

「今日はすごく静かですよ。困ったときは誰かに言ってください。」

「はぁ・・・がんばります。」

船長は久々にクマロニア行が楽しみだという。クマロニアはクマランドより北にあり寒い国である。貿易の盛んな頃はクマランドからたくさんの農作物を積み、帰りはクマロニアで取れる鉱物資源を積んで帰っていたそうだ。

「あなたはクマロニアの出身ですか?」

と船長はおおぐまちゃんに聞いた。

「いえボクはクマランドの山奥の出身ですが、なぜなんです?」

「あなたのしているネックレスの紫の石なんですけど、クマロニアで採れる紫翠石(しすいせき)という珍しいものなんですよ。あちらのくま以外で身につけているくまは見かけたことがないので。」

「これは父から貰ったもので、父も誰かから貰ったそうです。」

「みせて、みせて。わぁきれい。こぐまもこんなのほしい。」

「もしクマロニアで買えるところがあったら見てみようね。」

「ゆびわでもいいよ。」

恥ずかしそうにこぐまちゃんが答えた。

意味をわかってなさそうなおおぐまちゃんをみて、こぐまちゃんはすねてしまった。

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