第8話 こぐまちゃん、将来を考える
2頭は手がかりを探していろいろなところを見て回った。駅から港まで歩いてみたりまたその逆を歩いてみたり。通りにある店という店を片っ端から入ってみたりもした。何かがきっかけに思い出すかもしれないと考えたからである。おおぐまちゃんの休みの度に、暑い日も寒い日も二人は探した。町に行くところがなくなると遠く離れたグレイスハウスのある町まで足を伸ばした事もあった。こぐまちゃんの失った宝物を探して。
今日も遠くまででかけた。こぐまちゃんはクタクタになって寝てしまった。
「いろいろ連れ回しちゃってごめんね。今日も残念だったね・・・でもまたがんばろうね。」
ぐっすり眠ったこぐまちゃんをおんぶして部屋に帰った。
あまり手がかりが見つからないまま3年が過ぎた。こぐまちゃんは8歳になった。小学校の3年生だ。おおぐまちゃんの仕事は順調そのもの。彼の作る野性味あふれる調理のおかげで店はいつも賑わい、広い店に移転してもそれが絶えることが無かった。こぐまちゃんは学校から帰り、宿題を済ませると店を手伝ってくれるようになった。注文をとったり、テーブルを片付けたり、皿洗いをしたり。よく働いた。昼も夜も忙しく、疲れているだろうおおぐまちゃんが休日も休むことなくこぐまちゃんのために付き合ってくれる。彼女なりの恩返しのつもりだ。でも本当のところあることを目当てに来ている。おおぐまちゃんの作るまかない料理だ。ひとりで夕食を食べるのは寂しいが、ここへ来ればお客の賑やかな笑い声、いつも可愛がってくれるオーナーやスタッフが居る。料理の美味しさが何倍にも膨らむからだ。少ないながらもバイト代をもらっているので、それをためておおぐまちゃんへのプレゼントを買おうともくろんでいる。おおぐまちゃんより先に帰り、朝食と学校に持っていくお弁当の食材を買い、洗濯を済ませて疲れて帰ってくるおおぐまちゃんのために風呂の用意もした。いつしかこぐまちゃんは大好きなおおぐまちゃんのお嫁さんになりたいと思うようになっていた。
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