2ページ
「あぁ無理しないで」
「大丈夫ですよ、これくらい」
「どうするんです、重い物を持ってその拍子に赤ちゃんが産まれちゃったら」
「ふふ」
それなりに重くなったエコバックを持ってくれた奥さんが本当に心配になって言ったのに、当の奥さんは口を押えて笑っている。
「男の人は心配性ですね。大丈夫ですよ、いつもやっていることですし」
いつもやっていること? もうすぐ臨月でしょ? 門脇君は何をやっているんだっ。
「ふふふ、今日はちょっと出かけていますけど、主人もいつも気にかけてくれますし、奈々子もお手伝いしてくれるし、ね」
「ねーっ!」
今めっちゃ俺の脚で遊んでいたけどな。
「だから大丈夫です。それに」
「それに?」
「お腹が大きいからって休んでいてもダメですから。動いていた方が産みやすいって言いますし」
えー本当に? だって一人分の身体じゃないんだよ? あんなに重そうなのに動き回っていたら逆に怖くない?
「そりゃ動きすぎもダメですけどね。普通に生活する分には。奈々子の時もそうでしたし」
奥さんはカラッと笑って言う。
そう言うもの、なのかな? 妊娠も出産も経験したことはないし、経験も出来ないし。男からしたらとてつもなく大変で怖いものに思える。繊細で無茶をしたら壊れてしまいそうで。
「子供を産むことは病気でも何でもないんですから、心配し過ぎです。ママも赤ちゃんもそんなにやわじゃないですよ」
「そうなのかな」
お腹に自分以外の存在がいるということも上手く想像できないのに。
「良かったら触ってみます? 意外と頑丈で驚くかもしれませんよ」
「え」
そんな人様も奥さんのお腹を。
「大丈夫大丈夫、ほら」
奥さんは俺の手を取るとそのまま自分のお腹に当てた。洋服ごしのお腹は丸くて温かくて・・・なんだか不思議なパワーを感じた。俺の腹にはない、特別な何か。これが赤ちゃんとお母さんが持つ力?
「うん! げんきっていってる!」
いつの間にか同じようにお腹に手を当てていた奈々子が言った。
「元気って言ってるか。そりゃよかった」
正直やっぱりちょっと怖いけれど、でも生きる力、みたいなものを感じることは出来た気がする。
きっと二人の子供だし、奈々子みたいな姉もいる子だから、元気に生まれて来るに違いない。
「産まれたら、抱かせてくださいね」
「もちろんですよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます