ふしぎなちから

カゲトモ

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 清々しいとは言えない日差しを浴びながら、清々しいと言ってもいいくらいの強い横風が吹いた。一瞬身体がぐらついてしまう。まったく近頃の天気は一体どうなっているんだ。こんなの夏でも秋でもないぞ。

「ん」

 突然の疾風が視界の隅を過ぎる。正確に言えば足元を、だ。

「すかい~っ!」

 急に現れた北風小僧、もとい門脇奈々子は足元で両手をあげてピョンピョンと跳ねている。

「奈々子、こんなに暑いのになんでお前はそんなに元気なんだ」

「ななちゃんはぁいつでもげんきー!」

 太陽みたいな笑顔でそう言うと抱っこをしろとせがんで来る。もうすぐお姉ちゃんになるって言うのに。

「ママも元気にしてる?」

「うんっ! げんき!」

「そっか、そりゃよかったよ」

「ぱぱもでんき!」

「じゃぁ赤ちゃんは?」

 そう訊くと一瞬で難しそうな顔になって「きいてみる」と答えた。さすがは奈々子。

「あっ」

 店先が見えると、店内から驚いたような奥さんの顔が覗いた。奈々子は何も言わずに飛び出して来たらしい。

「スカイさんすみませんっ抱っこまでしてもらって」

「いえいえ、これくらい。まだまだ空気みたいなものですし」

「本当ですか? 私、最近奈々子が重くって」

「え、抱っこして大丈夫なんですか?」

「緊急時には、ね」

 奥さんはそう言って笑ってみせる。そんなに大きなお腹をしているって言うのに。世の中のお母さんは大変だ。

「正直大変なのはこれからですけどね」

「ですよね」

 小さい子供が二人になるんだもん。そりゃ今より大変になるに決まってる。

「門脇君に頑張ってもらわないと」

「ですね」

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