『 DOLL'S 』

乙音 メイ

第1話 メアリー記:「PROLOGUE」


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Flash Mob Story Book


    『DOLL’S』

乙音 メイ :作




   メアリー記

   「PROLOGUE」


  天の河銀河のひとつの大きな球体の宇宙に、四つの太陽があった。




 一つは昇りゆく力と共にあるラー、二つ目は美しく気高きアハトール、三つ目はアハトールを眠りの床に誘う歓びのトゥーム。


そして、四つ目は沈黙と共にあるケフラであった。


 三つの太陽は一つに見え、一つの太陽は無いように見えた。四つの太陽は入口、また出口である。


 


 初めに創造された3つの太陽は兄弟だった。兄弟はとても仲が良かった。でも、父に褒められたくて、張り合ってしまうことがあった。でもそんな時には、後で互いに反省し、質量の重い思考を泥団子のように一つに纏めて、父に精査してもらうのだった。反省する量が多ければ多いほど、それはまた、ごめんなさいと素直に言える自分を見てもらう機会が増えるのだ、と子供らしい考え方をしていた。父に注目され、喜んでもらえることは素直にうれしかった。それほど三人は父を愛していた。


 父は偉大で、我が子たちの自分への愛をいじらしく感じた。そして、三人のいじらしさゆえに出来た泥団子は、四つ目の惑星となって誕生し、三人兄弟の、年の離れた末の弟となった。父は、四人をこよなく愛した。




 父は三人の兄に、幼い弟の面倒をよく見るよう言い付けた。そして、目をかけている証として、父自らが創った惑星「二ビル」をメンテナンス星として、四人兄弟のそれぞれの宇宙に1年に一度、派遣することにした。




 二ビルは、4つの惑星の軌道を交差しながら、自転するお掃除ロボットのようなもので、ゴミとも言える重い波動を吸い込んでは浄化しながら排気し、宇宙を本来の清浄さに戻している。こうして、三つの輝く太陽王国の恒星と、産まれたてでまだ暗い四つ目の太陽の惑星を、楕円軌道で巡回し、父に注目されたいという気持ちをなだめている。今は駄々をこねている末の弟が、もうじき単純な素直さを取り戻す過程にある。そうすれば、四つ目の太陽も光り輝きだし、誰の目にも見えることになる。


 メンテナンス惑星「二ビル」は、艦長サナンダ・ジーザス、司令官アシュター、医務官サルーサが三六〇〇の一年をかけ、楕円を描いて航行する船でもあった。 




    





      第1章 





「……来て、来てください」




「……どなたか……私はここにいて助けを求めています……どなたか……」




 サナンダ・ジーザスとレディ・ナダはスターシップで夜の宇宙を航行中、ある星に近づいた。その星の意識、テレパシーが伝わって来たからだ。




「どうしたのです?」




「私の内で何か重い感じがあって、それがとても心許なかったのです。それで、優しい風や慈しみの雨を降らせたり、時にはそれを激しく降らせたり吹き起こしてみたのですが、治りません。身体の皮膚を揺り起こしてみたのですが、一時はよくても完全には治りません。


 このままでは私の体の一部が、どこかに、吸い取られることになりはしないかと。あちらに見える、この星系の光の主人も私を案じています。


 これらの原因を取り去るために、私の体中を歩き回って調べてほしいのです。これには、愛そのものであるあなたのような方の助けが必要です」




 このように言うのは、ミルキーウェイ銀河の四つ目の太陽系、幼い弟が体験中の夜の宇宙内、「地球」であった。地球は、三つで一つに見える太陽の軌道に乗って周回しているように見える惑星である。でも本当は、「ブラックムーン」と呼ばれることもある成長途中の黒い太陽が地球の恒星であり、この幼い太陽の周りを回っているのだった。




 母船に帰って評議会を開き、対応策を検討した。企業や政治家やその上の陰の支配者たちの動きを、何十通りもシュミレーションし精査してみた。このまま行くと、核爆発が起こるレーンに入っていることが明らかだった。チマチマした細かい汚染が家庭内で日常茶飯事の上、大きな爆発と放射能汚染で壊滅的になる恐れがあった。




 そこで、放射能汚染を除去するため、惑星地球にいる人たちにとっては過去とも言われる助けを呼ぶまでにはなっていない座標に、奉仕者を募った。倍率がとてつもなく高くなってしまったのは、それほど皆の愛が勝っていたためである。


 直接出向かなくても奉仕ができることは、選に漏れた多くの人にとっては慰めだった。私たちはチームを作った。惑星地球の全体の整備、私たちより低い周波数帯となってしまった地球の奉仕に適応できるボディの創造、シュミレーション訓練、これらのレスキュー活動を統括する銀河連盟。


 放射能がなくても、エネルギー体またライトボディで惑星地球で長く滞在するためにはボディの原子の調整が必要だった。私たちはある惑星に、低い周波数帯エリアを建造した。





 そこでは、私たちより重い波動の地球で生存するために、原子を粗くして肉体を創造した。ボディが物質化したため、エネルギーも光以外に物質化させて取り入れることになる。トウモロコシ、麦、米、オレンジやミント、ハス、麻、竹、月桂樹、ヒマワリ、ナッツ類など衣食住に適した植物の種子を氷詰め隕石で先に送り届けた。


 これら植物類は大気の調整にも活躍してくれる。水のためには沢山の珊瑚や海草も創造し、なるべく快適な生活が営めるよう準備を行っていった。





 ホログラムのような明るく輝くライトボディを、重く洗い粒子のボディに変換することは、私たちのブレインでは簡単に数値化できた。だが、実際に自分のボディとして慣れるまでは容易ではなかった。そしてどうにか、地球の波動適応に早かった科学者を50人、先に送った。




 それは、現地で物質のボディも造るためだ。胎芽として母親の子宮にある間、あるタイミングで人形の頭部中心の松果体に奉仕者のスピリットを封入することとなった。松果体は、ワープにとって重要な役目を果たす器官である。私たちは奉仕者にそれを比喩で伝えた。私たちには重い波動領域であるため、忘れてしまう可能性も捨てきれなかった。そのために、印象に残りやすい比喩で繰り返し、潜在意識に叩き込んだ。


 一本の木、木の幹の上には熟成した果実、その果実まで伝い登っていく蛇。クンダリーニのエネルギーを蛇に例え、印象に残るようにした。これは、木の棒と、その棒の先端の丸い松果体ゾーンを象徴する「笏」として、後世に伝えられるようになった。元々、笏は万民のものだ。




 これなら、善悪の知識を超えた叡智と、私たちの元にワープして行き来する能力を忘れることはないと、聖書が改竄されるまでそう思っていた。


                                            


 私たちの仲間である奉仕者の数は順調に増え続け、今では潜在的に80パーセントを超える人数となっている。20パーセントの人たちは地球出自の人間である。私たちは肌の色に関係なく、宇宙から来た愛と光の宇宙人であり、一つの家族である。


 時間、空間といったものに縛られない私たちにとって、それはあっという間のことだったとも言える。





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