第19話謎のAIマスターを捕獲せよ!
VOXエンタテイルメントの山口麻衣が自宅マンションのスクリーンに映った男と話している。スクリーンは左右二つに分割されており、片方の男はセキュアブラッド社の渡瀬代表だ。
麻衣が話している。
「・・それからAIマスターの探索を行っている、警察のサイバー犯罪チームが度々彼と接触を続けている、以上の事から想定ですがエル・ベリーのデビュー歌を作曲した、この河原シュンという人物が謎のAIマスターに最も近い人物のようです。彼はマスター本人では無いでしょうが」
「そうか、ラズベリーAIインタフェースの高速顔認証を自在にコントロール出来るのか。なんと素晴らしい技術だ。他の証拠は」
「イベントのVIP席に入るキーとなる虹彩や静脈のバイオメトリクス認証もラズベリーAIを操り突破しています。
当日のライブでVIP席を担当したアテンドの一名が彼の顔を覚えていました。
VIP席に来るにはあまり金持ちそうではなかったが、たまに一生に一度の贅沢で来る人もいるのでその類と思ったそうです。
電子記録では彼の使ったVIP席には他の人が入った事になっていました」
渡瀬ではない方の男が驚嘆する
「なんと、バイオ認証まで欺けるのか!早く謎のAIマスターの脳からその技術を抜き出して手に入れたいものだ」そう言って男はスクリーンから消えた。
残った渡瀬がスクリーンから麻衣を見つめて言った。
「麻衣、お前はVOXエンタテイメントに送り込んだ我々の一員だ。
お前がアイドルを引退する時、色々な罪から全部ガードして社会的に抹殺されるのを救ってやった事を忘れるな。
あの時の証拠はすべて保存していて、いつでも公表する用意がある。
もっとも、いまだにお前に興味を示すのは当時とは違って警察位だろうが」
麻衣は無表情に答える
「はい、忘れていません」
「だったら、指示通りに動け。失敗は許さん。
東南アジアで、厳しい訓練を受けた成果を出せ」
そう言って渡瀬もスクリーンから消えた。
麻衣はトレーニングウェアに着替えて、無表情に空手の形を作った。フロアの隅に吊るしてあるサンドバッグを凄まじい勢いで蹴り、拳で突き続ける。
豪華なホテルの一室、麻衣への通話を切った後、ハンズフリーの電話に向かって渡瀬が先ほどの男と喋っている
渡瀬が言う。
「Xデーの準備完了、明日より多重債務者リストから抽出した人間に順次ハッピーメールを送る」
「届いた方は突然のプレゼントに喜ぶだろうな。多重債務者では
現金が入ってもすぐに借金の返済で消えるか、夜逃げの資金だろうがね。
とにかく善意の第三者だ、送金された金を返せと言っても相手に返済能力が無くて実質消えてしまう事を知った持ち主の顔が見たいよ」
「それを見た人間は明日の自分に起こるかも知れないと思って、無様にうろたえるだろう」
男が言う。
「渡瀬、そろそろ麻衣もこっちで始末するぞ。
何年か働かせて関わった案件が多くなり過ぎた。今後の働きより、秘密の漏れるリスクの方が高くなったな。何事もバランス感覚が大事だよ」
その会話をホテル部屋に備え付けのAI ターミナルがじっと聞いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます