第10話アイドルインタビュー
ネコネコ超会議の音無ECHOライブに突然乱入してバーチャルアイドルとして登場した謎の新人「エル・ベリー」の人気は、マルチメディアのオリコンヒットチャートを駆け上った。
マネジメント権を独占獲得したVOXエンタテイメント主導でファンクラブが組織されるや、たちまち10万人以上の会員を集め、二次創作のアニメーションやライトノベル、ボイスデータを使ったカバー曲が企画され、社会現象クラスの騒ぎとなった。
人間が演奏する生音のバックバンドを従えたエル・ベリーのデビューライブも全国ツアーで開始された。
AIインタフェースが全てをコントロールしているので人間と同じように自然な会話も出来、バックバンドメンバーと本当のアドリブでの掛け合いは毎回のライブで常に新鮮な話題を提供し続けていた。
ネット放送番組の人気ドキュメンタリー「プロフエッショナルの流儀」にも特集され、パーソナリティーがスタジオの壁のスクリーンに映るエル・ベリーに対して、人間と同じように話しかける。
「エル・ベリーさん、あなたの魅力はご自分でどう思われます?」
すましたレジーが答える
「素晴らしいAIインタフェースと出会えたおかげで、本当に自分自身を表現する事が出来たことです。 また、それを応援してくれるファンの皆様にとても感謝しています」
「ところで、エル・ベリーさん。普段から気を付けていることなどありますか?」
「私の実態はコンピュータなのですが、コンピュータの三次元グラフイックスである私にも、日によって気分が優れない時や、今日は仕事をやりたくないヒ思うような日があります。そういう時に知らずにスタッフに厳しく接してしまう時があって、気づいた時には自分を戒めるようにしています」
パーソナリティーが本当に驚いたように言う
「エル・ベリーさん。日によって気分の変動がありますか」
「皆さんにはちょっと想像しづらいとは思いますが、ありますね。私もいつか素敵な恋愛をして、その人を皆さんに紹介できたらと思います」
驚いたパーソナリティーが更に続ける
「あの、その気分が優れない時には何か解消法はありますか?」
「そうですねえ、朝起き抜けで気分が優れない感じがしたときは、歯を二回磨きますね。一日の終わりですとゆっくりお風呂に入る事でしょうか」
「エル・ベリーさん、歯を磨いたりお風呂に入られたりするのですか?」
レジーがすまして答える
「しますよ。皆さんもやられているでしょ」
コンピュータから出る想像を超えた言葉に驚くパーソナリティーの顔が一瞬だけ映り、画面はどこかのスタジオを映した録画に切り替わった。
ボイスデータを使ったカバー曲を担当するプロデューサーやエンジニアが、思い掛けない楽曲の出来の良さを語った。
「他のボーカロイドと同じように制作しているのですが、元のボイスデータのせいでしょうか、エル・ベリーの場合は、想定外の音の揺らぎが歌に自然に発生して、意図せずに我々が聞いても驚くほどの出来になるのです」
(想定外?何故だろう レジー、君が何かやっているね)
話を続けるエンジニアの動画が消えて、僕の部屋の壁面ディスプレイにエル・ベリーの金色ドレスでレジーが現れた。
「はあい、シュン君のギモンに世界最高のAIシステムが特別にお答えしまあす。
ボイスデータから自然音への変換プロセスにAIインタフェースが介在していて、楽曲と歌詞全体にマッチするような変換を行っています。
この変換プロセスをナノ秒単位でシミュレートと調整を行って、より自然で人の心に響く歌になっているのでーす」
それで曲の出来が良くなるのか。
「まあ、人間の一流の歌い手程度にはなるわね」
「まあ、で一流ねえ。さっきのパーソナリティーは君の言葉に驚いていたよ」
スクリーンの中のレジーがふふんと笑う
「あのパーソナリティー、どうして僕がコンピュータなんかにインタビューしなきゃいけないんですかって、プロデューサーの部屋で文句言っているのが部屋のAIスピーカーから聞こえたから、少し意地悪してやったわ。
コンピュータのAIに意地悪されたと知ったら、あのパーソナリティー人生変わっちゃうんじゃない」
僕たちは二人で笑った。
「ところで ところで、私と大阪のユニバーサルスタジオジャパンに行きませんか。デートのお誘いでーす」
「私とって言ったって、君の実体はクラウドのコンピュータ群の中だろ」
「一緒というのは、必ずしも物理的な実体同士の近接を意味しないのよ。神われと共に在りって言う時、神様が横に立っていると思う?」
「いや、僕は残念ながら神様自体まだ見たことがない」
「でしょ。同じ空間と時間、体験を共有するのが一緒っていうこと。でもなんか物理的実体がないとシュン君が私と一緒の気分が出ないだろうから、このレジーターミナルを私と思って持って行ってね」
「レジー、行くのはいいけど絶叫ライドのセンサーがなぜか不良で速度が普段の倍になったりしないだろうね!」
「それは乗ってみてのお楽しみでぇす」
何か不安を感じる。
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