トキノココンビの日常

七戸寧子 / 栗饅頭

プロローグ

 よく晴れた、さんさんと太陽が降り注ぐ昼間。

 ジャパリパークにはひとつの歌声が響いていた。

 昔よりも、ちょっとだけ上手くなったがまだまだ「上手」とはかけ離れた歌。だが、そこには楽しそうに歌う少女の姿があった。


 その少女の名は「トキ」。


 歌うことが好きだが、同時に理解不能なくらいの音痴である。そのため、彼女が歌っていると嫌そうな顔をして遠ざかってしまう。


 ただ、そんな彼女の歌を好いて聴く者だってゼロでは無いのだ。


 青緑の髪にフードをかぶったの下駄の少女。

 彼女の名は「ツチノコ」。


 彼女はトキの歌が好きだ。そして彼女自身も音楽を嗜む身である。それまで石に座ってトキの歌に耳を傾けていたのだが、急に二胡いう中楽器を構える。そして、歌に合わせて弓と弦を擦り合わせ・・・


 音痴で、ほとんどの人が聴きたがらぬトキの歌が一転、とても美しい音色になる。と、言うのもトキ歌声が変わった訳では無い。ツチノコの奏でる二胡の優雅な音が、トキの歌声と上手くバランスを取って美しい音色へと引っ張っているのだ。


 トキの歌、ツチノコの二胡、この二つが重なると誰もを魅了するハーモニーが生まれる。それは、この二人だからこそできる事だった。


 ひと通り歌を歌ったトキは尋ねた。


「いかがでした?」


 それに対し、ツチノコは答える。


「やっぱり、いい歌だ。私の方は?」


「最高ですよ!ツチノコの二胡、とっても素敵です!」


 ふふふ、はははと二人で笑い出す。ツチノコは二胡置き、トキに近づく。トキもまた、ツチノコに歩み寄る。そして。


「「ベストパートナー」」


 パァン、という乾いた音と共に言葉を重ねる。ハイタッチというやつだ。


 そして、ベストパートナーという言葉。そう、二人はベストパートナーなのだ。音楽的な意味だけではない。


 初めて自分の歌を理解してくれる人。


 初めて地上に出て親しくしてくれた人。



 そんな2人が、『初めて』を繰り返し、成長を遂げ、今では。


 恋人同士。


 多くのヒト、またはフレンズと関わる生活の中でお互いにかけがえのない存在になり、ひとつ屋根の下で暮らしている。



 これは、この二人と。

 それを取り巻く愉快な人々と。


 彼ら、彼女らの幸せな日常を綴った物語である。

























「・・・ところで、めちゃくちゃ暑いな・・・」


「ですね、もうお盆も終わりだって言うのに」


「でも?今日と明日の仕事が終われば!」


「・・・ええ!待ちに待った!」



「「夏休み!」」

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