でれすけ
若狭屋 真夏(九代目)
夕方のミルクとシュガー
暑い夏が終わりかけている。どこからか虫の音が聞こえるようになった。
その日も猫のミルクは夕方になってから爪とぎを始めた。
そんなミルクをあきれた目で見ているのは柴犬のシュガーだ。
「ねぇもう私たち家族になって一年以上経つのよ。だって結婚式ってやつに初めて二人して出たの前の夏よ」シュガーはそれでも爪とぎを止めない。
「わたしは君という尊敬する犬と家族になれたのは誇りに思っているのだ。しかし問題は君の主のでれすけなのだ」と爪をとぎながらミルクは答えた。
「でれすけじゃないの、圭介もう覚えてよ。」
「でれすけで十分なのだ」
「もう勝手にすれば。。」といってシュガーはミルクの元を離れた。
やがて一足早く二人の飼い主の一人でミルクの飼い主である高津かおるが帰宅した。玄関の音がガチャガチャとしたのでかおるが帰ってきたのだとシュガーが玄関に向かったがなんとミルクがちゃっかりと座っていた。
「にゃ~あ」とかおるの足にまとわりつくミルク、シュガーは尻尾をフリフリするのを止めない。
ミルクは2歳の男の子でシュガーは3歳の女の子だ。
「ただいま」そういうとかおるは二人にあいさつした。
「いい子にしてた?今ごはんあげるからね」
「にゃ~」とミルクは甘え始めた。
「なんかミルク最近赤ちゃん返りでもしたのかしら?やけに甘えてくるのよね」二匹の食事の支度をしながらかおるは独り言を言った。
「赤ちゃんだって」とシュガーがからかう。
「猫はずーとあかちゃんでいられるのだ」とミルクはかおるに甘えている。
二匹が餌を食べ始めるとかおるはキッチンで夕食の準備をはじめて部屋の中がいい匂いで包まれる。この時間が二匹は好きだった。
それから一時間して玄関から音がする。かおるの夫圭介が帰宅したのだ。
ミルクは殺気立っているがシュガーは玄関に向かった。
かおるもシュガーが玄関に向かうのを見て夫が帰ってきたのだと思い玄関に向かう。
「ただいま」と圭介はかおるとシュガーにいった。
「おかえりなさい」とかおるは圭介のほほにキスをする。
圭介がミルクいわく「でれすけ」になる瞬間だった。
「アッ」と圭介の片手にケーキを持っているのにかおるが気が付いた。
「今日だったのね」とかおるは言った。
そう今日が結婚記念日ということになる。
「なんだよ、かおるさん先週いってたろ?シフォンケーキが食べたいって。でもまだ一年なんだからこれからもよろしくおねがいします」といって圭介は頭を下げた。
圭介が頭を上げると薫は圭介の唇にキスをして「これからもよろしくね」といって頭を下げる。
「ワン」とシュガーが吠えた。
「もちろんシュガーとミルクもこれからもお願いします」そういってシュガーの顔を圭介はなでる。
「あれ?今日もミルクはお出迎えなしなのか?」
「なんだか赤ちゃん返りしたみたいになっちゃって。。。」
「え?赤ちゃん。。。それはまだ早いよ。。。。」と圭介は顔を赤くした。
釣られてかおるも頬を赤くする。
「あ、そうだ、去年の結婚式で二匹ともリングを運んでくれたろ?今日はそのお礼とこれからもよろしくってことで、、、」といってカバンの中をあさる圭介。
「あ、あった。シュガーの大好物の「ほねっこ」の限定版。あとネットで手に入れた「ちゅーる」の新バージョン。これ手に入れるの大変だったんだよ。友達にお願いして何とか手に入れたんだ」
「にゃ~あ」とゆっくり玄関に現れたのはミルクだ。
「ほんと現金ね。」シュガーは嫌味を言った。
「猫は小判よりちゅ~るが大好きなのだ。君の主も猫の飼い主として順調に経験値を積んでいるな。感心感心」
そういって圭介にでれでれになるミルク。
「本当に、君とミルクが家族になってくれてよかった。ミルクにはまだ嫌われてるけどこれからもがんばるよ。」圭介はそういってリビングに入っていった。
部屋のにおいの正体は「カレー」だった。
「あ、今日は僕の好きなカレーだな」
「そう、辛くないカレーよ」
といって二人は食事を始めた。
ミルクはちゅ~るの新バージョンを早く食べたいので圭介の足元でがじがじを始めた。平和な食卓の風景がそこにある、
でれすけ 若狭屋 真夏(九代目) @wakasaya
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