ぐにょ
すごろく
ぐにょ
これは俺がとあるメーカーのポテトチップスを食べていたときの話。
ポテトチップスを食べる際は、テレビやネットなんかを観ながら無心で貪るのが癖なのだけれど、その日もそんな風に食べていると、ぱりっとした触感の中に一つだけぐにょっとしたものが混じっていることに気づいた。違和感を一瞬覚えつつも、そのまま飲み込んだ。まあ気のせいだろうとそのときは思った。しかしそれからは、そのメーカーのポテトチップスを食べるたびに一枚はぐにょっとした感触もものが混じっている。俺はだんだんと気味が悪くなってきて、ある日、慎重にポテトチップスを一枚一枚袋から取り出して、丹念に観察してみるということをやってみた。大抵のポテトチップスはやはり普通である。やはりただの気のせいかなと思おうとしたとき、そいつが手に触れた。
そいつは他のやつよりもひやっと冷たくて、触れた瞬間、ついびくっとなった。指先をぐにぐに動かしてみると、それはどうにも他とは明らかに違う感触であることがわかった。なぜだかそれだけ感触がゴムみたいな柔らかさなのだ。
袋から取り出して観察してみる。質感もゴムみたいだ。変に厚みがあって、ちょっと両手で引き延ばしてみればびろーんと伸びる。こんな異質なものが入っていたというのに、今まで気づかずに食べてしまっていたのか。俺は何か特殊な恐怖を感じつつ、そもそもこれは何なのか考えていた。
今まで食べていて大丈夫だったということは、一応食品だよな?
どうにも口にする気にはなれなかったが、歯で噛むようにぎゅっと指先で押してみると、端の方からまたにゅっと妙なものが小さく飛び出した。それは何か緑色をしていた。今度はなんだと目を凝らしたとき、俺は寒気がした。その緑色をしたものは、ポテトチップスのゴムみたいなものから頭を飛び出した状態のまま、何やらうねうねと動いているのである。まるで芋虫のように。
俺はつい驚いて「ぎゃっ」と素っ頓狂な悲鳴を上げて、そのポテトチップスのゴムみたいなものを放り出した。それは床に転がると、突如として大量の煙を発生させた。それは水蒸気なんだか、それとも何か他の薬品的なものなんだかはわからなかったが、俺が慌てふためく間もなく、その謎の煙は部屋中を見えなくなるほど覆いつくして、そしてあっという間に霧散して消えてしまった。煙が消えた後には、ポテトチップスのゴムみたいなものの姿はなく、それがあった場所にはコップから少し零れたような水の広がりがあるだけだった。
俺はもういよいよ何かとんでもないものを見てしまったような不安感と気色悪さに包まれて、とにかく雑巾でその水を必死に拭き、雑巾ごとゴミ箱へと捨てた。水自体は無臭で透明だったが、無味がどうか確かめる気にはなれなかった。ついでに食べかけのポテトチップスの袋も躊躇なくゴミ袋へと放り込んだ。
それ以来、そのメーカーのポテトチップスは食べていない。
あれが何だったのか、わからないし、わかりたくもない。
ぐにょ すごろく @hayamaru001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます