属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか?~でも妹とは結婚できません!

於田縫紀

序章 俺と千咲は双子です

第1話 高校生活1日目

§1

 4月7日火曜日、入学式の日の朝。

 俺達はまだ着慣れない新しい制服で、人混みのなか掲示板の名前を探していた。


千早ちはや!ほら、同じクラスだよ!」

 俺の背中にひっついた状態で姫路ひめじ千咲ちさが指を指す。


「特進Aは1クラスしかないから当然だろ」

 合格して入学してしまった以上、同じクラスになるのは当たり前だ。

 それでもクラス発表を見に来た理由は簡単。

 教室の場所やクラス名もここに表示されているから。

 特進Aは内部では1組、場所は1階の101教室。


「じゃあ行くか」

「うん」

 掲示板の人混みを離れつつ、千咲に注意。


「あと背中にひっつくのやめろ」

 背中にひっついで腕を回した状態の千咲を引き離す。

 入校初日から変な噂を立てられたら困るのだ。

 俺より10センチ近く背の低い千咲が俺の方を見る。

 濃い栗色の髪をツインテールというか2つにまとめていて。

 その下からやや幼めの顔立ちに大きい目が覗いている。

 運動方面は今一つだが成績も優秀。

 顔も可愛いが性格も悪くない。

 やや煩いところもあるけれど。


「なら手を繋ごうか」

「それもいいから」


 普通なら彼女として文句無い。

 けれど俺に対してのみ重大な欠陥がある。

 中学時代の俺はシスコンと呼ばれていた。

 システムコンピュータの略では無論無い。

 理由は簡単だ。

 千咲に四六時中ひっつかれていたから。


 そう、姫路千咲は俺こと網干千早あぼしちはやの妹。

 厳密に言えば二卵性双子の片割れ同士である。

 両親が離婚して俺は父方へ、千咲は母方へ。

 今では違う姓になっているが、元は家族。


「手を繋ぐくらいいいじゃない」

「これ以上俺をシスコンにする気が」


「愛があればそれくらい」

「愛があっても法律が許さないの!」


「なら妹設定じゃなくてお姉さん設定がいい?幼なじみの方が萌える?」

「自分の設定を変えても兄妹なのは変わらない」


「それくらい無視してくれてもいいじゃない」

「良くない!」


 早く千咲こいつにはふさわしい相手を見つけてやらないと。

 このままでは俺の自制心が危ない。

 妹だという意識があるから今のところ何とかなっているけれど。


 そもそもこの学校を選んだのも千咲と別な高校に進学するため。

 千咲の中学3年4月時点では無理な難易度の荒川学園特進Aを選んだのだ。

 違う学校やせめて違うクラスならこれ以上俺が困ることが無い。

 あわよくば千咲がふさわしい相手でも見つけてくれるかと思ったのに。

 猛勉強で模試の偏差値を10近く上げ、結局同じ特進Aに合格しやがった。

 結果、こういう状況である。


 昇降口から入って廊下右側突き当たりの教室に入る。

 席順は出席番号、つまり男女混合あいうえお順。

 網干と姫路の間は大分離れている。


「それじゃ、こっち来るなよ」

 そう言って俺は自席に座る。

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