シュヴァルツリッター VS オラケル

有原ハリアー

有り得たかもしれない戦い

「召喚されたぜ」

 須王すおう龍野りゅうやは、愛機『シュヴァルツリッター』のコクピットで、無線機を通じた状況報告を行っていた。

「確認したわ、龍野君。敵機は『黒と銀を基調とした色合い』よ」

「あいよ、ヴァイス」

 “ヴァイス”と呼ばれた少女は、龍野に敵の外見を指示する。

兄卑あにひ、勝ちなさいよね」

「もちろんだぜ、シュシュ」

 “シュシュ”と呼ばれた少女は、龍野の勝利を信じる。

「お前ならば、勝てる」

「ありがとよ、武蔵むさし

 “武蔵”と呼ばれた青年は、龍野を激励する。

「おっと……あれか」

 龍野が黒と銀を基調とした機体を目視し、愛機に大剣を構えさせる。

 あちらの機体もシュヴァルツリッターを発見したらしく、首元を動かしていた。

(鈍重そうな外見だ……。スピードで、押し切れるか……?)

「龍野君、敵の速度には注意して。最大でマッハ2.5を出せるそうよ」

「マッハ……!? あいよ、わかった!」

 思い込みを解消される。


 実際、黒と銀の機体は胴体の幅が広く、鈍重にしか見えない。

 だが、「超音速マッハを出せる性能である」と、登録情報には載っていた。そしてそれを、ヴァイスは確認していたのである。


「さて、それじゃ……」

 愛機に大剣を眼前に構えさせつつ、敵を見据える龍野。

「もしもし、そちらの騎士様?」

 すると、女性の声がした。ヴァイスのものでも、シュシュのものでもない。

「誰だ?」

「わたくしですわ。貴方の目の前にいる、黒銀くろぎんの機体の主ですわ」

 機体が丁寧に一礼する。


「まずは名乗りましょうか。わたくしの名前はリラ・シュヴァルベ。そしてわたくしの駆るこの子は、『オラケル』。互いに全力を尽くしましょう、騎士様」


 既に互いの素性を知っているにも関わらず、丁寧な物腰だ。

 礼には礼を。そう思った龍野は、自らも名乗る。

「では、こちらも。俺の名前は須王すおう龍野りゅうや、駆っている機体は『シュヴァルツリッター』だ。悔いなく戦わせてもらう」

 既に臨戦態勢だった龍野は、自己紹介を終えると同時に仕掛ける。

「うふふ……では、これを」

 オラケルがボウガンを取り出し、シュヴァルツリッターに向けて矢を放つ。

 距離300m、おまけにオラケルに直線状に進んでいる。避けようがない。

「素早い対応だな!」

 だが、障壁が自動で展開。

 矢を弾き飛ばしつつ、ひたすら距離を詰める。

「あら、様子見が過ぎたわね」

 しかし、ボウガンが効かなかったことを意にも介さないリラは、オラケルに魔力を充填し始める。

「では、これならば……」

 オラケルの機体表面にある紫色の宝石が、耀き始めた。

(まずいな……!)

「龍野君、突撃を続けて!」

「わかってるよ!」

 なお距離を詰めるシュヴァルツリッター。

 しかし、残り25mのところで――


「『貫け、雷よ』」


 オラケルから放たれた雷撃を、もろにうけてしまった。

「ッ!(俺はいいが、機体の障壁を半減させられた……! 何て威力だよ……!)」

 しかし突撃を続けていたのが功を奏し、大剣の間合いまで距離を詰めた。

「どうだ!」

 斬撃を見舞い、オラケルの装甲を両断する。

「ダメか、浅いな……!」

 命中はしたが、とっさのバックステップでダメージを減らされた。

(やっぱ、一筋縄ではいかねえな……!)

 更なる斬撃を繰り出そうとする龍野。


「『望むままに、暴れ狂え』」


「ぐっ……!」

 それを見越したリラは、風の魔術で強引に距離を取らせる。

 シュヴァルツリッターへのダメージは全て障壁が肩代わりしていたが、開始時点の25%しか残っていなかった。

(魔力を回す。頼むぜ、まだお前が必要だ)

 龍野は魔力を回し、障壁を全回復させる。

「なら、手を変えるか……!」

 大剣を構え、照準を定める。

(今だ……!)

 剣先からビームを放ち、オラケルを捉える――そう、思った矢先。


「『はしり、ついえよ』」


 リラの魔術が、迎え撃った。

「ッ!」

 しかし完全には間に合わず、オラケルの左肩を浅く撃ち抜かれる。

「敵ながら見事ね。わたくしと同族のようですが、どうでしょうか?」

 龍野に話しかけるリラ。

「ということは……あんたも、『魔術師』、か?」

「ええ」

「奇遇だな」

「そうですわね。こんな出会いはしたくなかった。そして、

 大気が一変する。


 オラケルの宝石が光を放ち始め、そして、オラケルを中心とした竜巻が発生していた。


(一瞬で、これほどの風を……!? 俺の今までの相手は、何だったんだ……!)

 龍野は再びビームで狙い撃つが、またもや雷撃に相殺される。

「では、さようなら。『きなさい』」

 リラの号令で、竜巻はシュヴァルツリッターの元へ奔る。

 いや、違う。


 


「ッ、龍野君! 機体の制御が……!」

 ヴァイスが悲鳴を上げる。

 実際、シュヴァルツリッターの制御は不可能な状態だった。加えて、障壁が凄まじい速度で耐久を減らされる。

「短くとも楽しい時間を、ありがとう。貴方との別れは、済ませましたわ。騎士様」

 再びオラケルの宝石が輝く。

「ッ……!」

 龍野はオラケルを、ただ見据えることしか出来なかった。


 そしてシュヴァルツリッターは、オラケルからの百の雷によって貫かれてしまった。



 作者からの追伸


 ここまでが、紹介でございます。

 ちなみに、ネタばらししましょう。


「龍野はあの程度で死ぬわけないじゃん」というものでございます。


 が、あくまで「オラケル」の強さを見せるため、龍野敗北エンドに見せた終わり方をさせました(“ゲームの体験版”を意識)。


 ちなみに、リラの魔術は、風や雷だけではありません。他にも使えます。

 なお、彼女は『闇』属性が得意です。


「オラケル」を使いたいロボット愛好家が、これをお読みくださるのを信じております。


 では、自主企画本編でお会いしましょう。

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シュヴァルツリッター VS オラケル 有原ハリアー @BlackKnight

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