光影世話集

影宮

序 光影

 ときヒカリトラとなり、

 時にヒカリタヌキとなり、

 時にヒカリウマとなり、

 時にヒカリイヌとなり、

 時にヒカリクマとなりまして、

 五の世をあゆみ今や六つ目の世を歩む道。


 そしてカゲときマシラに、

 時にに、

 時にカラスに、

 時にネコに、

 時にジャとなりまして、

 また同じく五の世を走り、六つ目の世を走る道。


 ヒカリの歩む世とカゲの走る世は同じ世にありまして、出会い方も別れ方もなれど、離れたことは一度となく。

 しかし、世は同じと申せど、出会えぬ世もあったのです。

 何が双方そうほうをそうさせたのか、いくら五の世を知れどそれはわかるまい。


 この世、ヒカリはあるばしょに産まれた。

 正直者で真っ直ぐなお馬鹿さんでね、それはもうこちとらにとっちゃぁ、眩しくて!


 この世、カゲはあるすみかに産まれた。

 賢く、しかし素直でない、それがしとは真逆の奴なのだ。


 ヒカリは珍しいことに、ちょいといつもと違うよこみちを歩いておりました。


 カゲはいつも通り、人の姿の見えぬろじうらを歩いておった。


 すると、目の前に暗ぁ~い誰かさんがおりまして。


 すると、まなこの前に明るい者がおった。


 興味を持って話しかけてみたわけ。


 その者が話しかけてきたのだ。


 そしたらソイツは走って何処どこかへ逃げてくんだよねぇ。


 話しかけられ、カゲヒカリから走って逃げた。


 ま、ソイツはこちとらなんだよね。


 逃げられたヒカリとは某にござるが……。


 カゲは恐ろしくなっちまったのさ。

 何せ、五つの記憶に残ってたお方が、突然とつぜん目の前に現れるんだもの。

 何て言ったらいいかわかんねぇんだよ………。


 ヒカリはその時やっと思い出したのだ。

 そやつを追わねば見失ってしまう、と必死に追ったのだが、速くて追いつかぬ。

 それはもう恐ろしかった……。


 カゲはやっと足を止めて、振り返った。


 ヒカリはやっと追いついて、そのまなこを見た。


 っと、まぁこの世の出会いはこ~んな感じですかねぇ。


 今やこの世の道を共に再び歩んでおる。


 わざと二人で話したけど、ついてこれてるかい?


 申し訳ござらん。



 桜舞う夜も、風の涼しい青空も、紅を眺めた道も、雪を乗せる景色にも、きっと聞こえぬ声が響いたでしょう。

 あんた様は、その声に足を止めた時なんて一秒すこしも無いんじゃありません?

 さぁさぁ、ちょいとその声とやらの物語じんせい、聞いてみちゃくれませんかね?

 さて、これらがまことの話かいつわりのはなしか…。

 あんた様がお見逃しきよう受け取めてくださるのを期待して……

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