出逢い

 ズキッ…っと足に痛みが走る。


 僕は左足を引きずりながら、見慣れた学校の廊下を歩いていた。

 2学期が始まってすぐの事。今年数えで16になる僕は、今日も今日とてサッカーに燃えていた。その余り、肌は黒く焦げ、歯止めも効かなくなっていた。

 まあ、こんな怪我は運動部では日常茶飯事だろうと言い訳して、いつものように保健室へと歩いている。

 今日も同じだ。保健室の先生に呆れられ、冷却の為氷を渡され、顧問の先生を誤魔化してまた練習に参加する。そう思っていた。

 —だが、今回は違った。

 *

「えっ、捻挫…ですか?」

「そう。普段から無理ばかりしてるからよ。暫くサッカーは休まないとダメね」

 保健室の先生が告げると、僕の足を持ち上げ、アイシングや固定など適切な処置を行った。

「待ってて、今サッカー部の先生に連絡してくるから」

 扉が少し雑に開けられ、丁寧に閉められ、静けさが訪れた。

 辺りをゆっくりと見回す。カーテンの隙間から差し込む淡い陽光が見えた。

 生きがいのサッカーが出来なくなるという、受け入れがたい事実が僕を襲う。それも相まって、「もう夕暮れ時か…」と感傷に浸っていると、光の先に誰かいるのが分かった。

 雪のように真っ白な髪。ヘッドボードに遮られて顔こそ見えないが、ちょこんとした可愛らしい頭は垣間見える。

 すると、見ていた方向から椅子を引く音がした。

 足音と共にその子が僕の目の前に現れ、立ち止まる—事はなく、速足で通り過ぎていった。すぐにドアの開閉音。

 ただ、一瞬だけでも見えた、セーラー服に包まれるその可憐な姿を、僕は生涯忘れないだろう。

 それにしても、何故頬を赤らめて急いでいたのだろうか?

「あ…お花を摘みに…」

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