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「ちょっと待ってよー! 僕は無実だよー!」
「痛い、鎖が痛いです。……モリー先生」
そんな声を上げながらデボラとアビー、そしてまだ丸くなったままのマリンはずるずるとモリー先生に引きずられるようにして移動していく。これから地下のお仕置き部屋に連れていかれる三人にメテオラは同情した。
メテオラとニコラスはそんな三人に大きく手を振って見送りをしていた。
するとモリー先生が一度、歩みを止めて後ろを振り返った。そして、ゆっくりとこちらに引き返してくると、メテオラのすぐ目の前までやってくる。ニケー先生も同じように、モリー先生の横について移動する。モリー先生はメテオラの顔をじっと見ている。
「……この間はありがとう、メテオラくん」
モリー先生がメテオラを見てそう言った。
「なんのことですか?」とメテオラは答える。
「魔法学校十三階でのことです。じじょうはあのあとマグ先生からききました。メテオラくんはわたしのためにがんばってくれたんですよね?」と言ってモリー先生はふふっと笑う。
「いえ、僕はなにもしていません」とメテオラは答える。
それは謙遜ではなくてメテオラが本当にそう思っていたことだった。
「……メテオラくんには、わたしからあとでなにかお礼がしたいとおもっています。おれいはなにがいいからしら?」モリー先生は言う。
「……あの、モリー先生。実はモリー先生に一つお願いがあるんですが聞いてもらえますか?」とメテオラは言う。
「いいけど、お願いってなに?」とモリー先生はにこやかな顔でメテオラを見る。
「その、言いにくい話だとは思うんですけど、昔の話を、古き森の時代の話を、モリー先生からお聞きしたいんです。……お願いできますか?」メテオラは言う。
モリー先生はメテオラの言葉を聞いて、少しだけ驚いた顔をする。
「……それは魔法使いたちのはなしだけではなくて、わたしたち銀の民の話や、……あのひとのはなしをふくめて、むかしの魔法の森のおはなしがききたいってことですか?」
「はい。そうです」とメテオラは答える。
「……できれば、人間の国の、北の王国のお話もふくめて」とメテオラは言葉の最後に付け加える。
するとモリー先生はにっこりとメテオラに向かって微笑んだ。
その笑顔は今までのモリー先生の笑顔とはどこか違う、まるでずっとかぶっていた仮面をとったような、本物のモリー先生の笑顔だった。
その笑顔を見て、メテオラだけではなくて、近くにいたニコラス、デボラたち月組の三人、そしてニケー先生も驚いた顔をした。
「それはいいわ! うん。そうしましょう!」
とモリー先生は本当に珍しく嬉しそうな声をあげて、満面の笑みでそう言った。
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