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そんなニケー先生を見てニコラスはあわわと恐怖の表情をその顔に浮かべていた。その気持ちはとても理解できる。立場が変わればメテオラたちがニケー先生のお説教をされることになるからだ。落ちこぼれのメテオラたちはこれまでに何度かニケー先生のお説教を受けた経験があった。そのときのことをニコラスは思い出しているに違いない。
「あの、新聞部は今週から正式に活動許可を受けていると聞いています。それにモリー先生は新聞部の顧問ではないのですか? そのモリー先生がデボラたちをつかまえているのはどうしてでしょう?」とメテオラは聞く。
「わたしはあくまでがっこうのきそくで、ぶかつどうにはこもんがひつようだからそれをうけたのであって、しんぶんぶのかつどうじたいはワルプルギスさんにいちにんしているの。だからわたしのせいとたちががっこうのきそくをやぶってぶかつどうをしているのなら、それをとりしまることにいろんはないのよ」とモリー先生は答えてくれた。
よく見ると確かにデボラとアビーは肩掛けカバンの中に魔法新聞の束を入れていたし、マリンはその首に貴重な魔法具である写真機を下げていた。どうやらデボラたちは今回もまた無許可のまま、この間と同じことをして、同じようにニケー先生が来て、同じように逃げようとしたのだけど、今回はモリー先生がいたために三人とも現行犯で捕まったというわけだ。
いくら正式に活動許可が下りたからといって、勝手に正門前で新聞を配っても良いということにはどうやらならないらしい。
「メテオラくん」
ニコラスがいつの間にか、デボラから新聞を一部、受け取ったようで、その手に最新版の魔法新聞を持っていた。
魔法新聞パンプキンの一面にはでっかくこう見出しが書かれている。
『魔法学校の幽霊の正体をついに魔法学校新聞部が突き止めた! その正体は赤毛のメイド魔法使い。みんなもよく知っている、あのべべさんである!』
その見出しの下には紐で縛られた泣き顔のべべさんと、その前でピースサインをしているデボラ、アビー、マリンの姿が写っていた。
「じゃあメテオラくん。わたしはこれから、わたしのせいとたちをお仕置き部屋につれていくから、あなたたちもきょうしつにいきなさい」とモリー先生はにっこりと笑ってそう言った。
その笑顔がなぜか少し恐ろしい。
モリー先生は表情をあまり変化させず自分の感情をなるべく生徒に見せないようにしていることで有名な先生なのだけど、こういうときにはなぜかとても楽しそうに笑うのでそれが余計に怖かった。
「周りのみんなもそうよ。見せしめの時間は終わったからみんな教室にいきなさい! 遅刻しちゃだめだよ!」とニケー先生が周囲の小さな魔法使いたちに大声でそう言った。
小さな魔法使いたちは「はーい」と返事をすると蜘蛛の子を散らすようにぱらぱらと魔法学校正門の中に吸い込まれるように歩いて移動していった。
「……じゃあね。みんな。またあとで」
そんな生徒たちについでモリー先生が歩き出す。
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