176 魔法新聞パンプキン 号外その二


「……怪我、やっぱりよくないんですか?」とメテオラはニコラスに聞いてみる。

「いや、アネットさんの足の怪我は無理しなければ二、三日で大丈夫ってことなんだけど、それよりもあのあとアネットさんはいろんな人にすっごく怒られちゃったんだよね。

 なんでも昔、アネットさんは一度右足に大怪我をしちゃっていたらしいんだ。今回の怪我は、その怪我が再発してしまった怪我みたいなんだよ。

 昔、足の治療をしたときに絶対に無理しちゃだめってアネットさんは言われていたんだけど、今年はたぶん、見習い魔法使い卒業試験の年ということもあって、ずっと守っていたその言いつけをアネットさんは無視して、すっごく頑張って頑張りすぎて無理しちゃったみたいなんだ。

 連絡を受けて駆けつけてきたアネットさんのお母さんにもアネットさんは叱られちゃったみたいだし、それでアネットさん、すっごく落ち込んでた」とニコラスは言う。

 メテオラはニコラスの話を聞いて、アネットが無理をしてしまったのは、きっと星組の教室で空が飛べるという手応えを感じたことと、それからきっと僕たちといることが楽しかったからだとメテオラは思った。

 アネットの状況は、そのままメテオラにも置き換えられるような状況だったから、アネットの気持ちがすごくよくメテオラにはわかるような気がした。

 アネットはメテオラと同じように診療所に押し込められて、謹慎という形で罰を受けているらしい。

 アルルさんは謹慎はよくないけど、アネットの怪我のことを考えて、今回の馬場はお医者さんの立場から、アネットの怪我がよくなるまでは動かないほうがいいと判断してその行為に協力しているようだった。

 でも、その息子であるニコラスは我慢ができないらしい。

 ニコラスはどうやら、アネットを診療所から救い出そうと、こっそりと計画を立てているみたいだった。

 メテオラはもちろんアネットのお見舞いにはいくつもりだったのだけど、それだけではなくて、こうしてメテオラはニコラスの考えた『アネット姫救出作戦』の片棒を担がされることになったのだ。


 注 アネット姫救出作戦 この作戦でメテオラは、秘密の協力者の力を得てあるアネットの秘密を知ることになるのだけど、(メテオラはすごくびっくりした)だけどどうやら、その秘密の人物とニコラスは事前に知り合いだったらしく、ニコラスはメテオラよりもずっと前のある地点で、この『アネットの秘密』に気がついていたようだった。


 魔法新聞パンプキン 号外その二


 双子の不死鳥のお姫様について


 魔法の森に暮らしている黄金の民の王族である血統、いわゆる純血種の中でも最上級の血統に位置する魔法使いの血には、どうやら不老不死を可能にする『不死鳥の魔法力』が眠っていると言う伝説があるらしい。

 この力が本当であるのかどうか、まだ確証は得られていないが、黄金の民の王族にはまれに『双子のお姫様(プリンセス)』が生まれることがあるらしく、この双子のうちどちらか片方の血には不死鳥の力が宿り、反対にもう片方の血にはほぼ、なんの魔法力もない状態(まるでアスファロットのようではないか)で生まれてくる、と言う現象が起こるようなのだ。


 私の取材によると、現在魔法の森で暮らしているお姫様に双子の姉妹はいない。

 残念である。

 もし仮に、『そのお姫様に双子の姉妹がいれば、この時代に不死鳥の力を観測することが可能だったかもしれない』のだ。

 王家の血に双子が生まれるのは数百年の一度、あるかないかという確率らしい。

 できればその数百年に一度の奇跡が私がこの世界の中に止まっていられるうちに起きることを私は希望する。

 それはもちろん、不老不死の力を求めて、ということではない。

 純粋な、つまり魔法使いと言う種族に生まれたのなら、誰しもが生まれながらに持っている『好奇心』からの願いである。

 続報を待て。


 記者 ワルプルギス


(どうせこの記事も検閲すれば廃棄されるのだろう。なら、検閲はなしだ。直接生徒たちにばらまいてやる。ふふ。みんな驚くぞ。待っててよ)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る