177 秋の始まり
秋の始まり
魔法学校の二学期が始まってすぐの秋の始まりのころ、メテオラとニコラスが魔法学校の正門前にたどり着くとなにやらざわざわとした人混みの音と大きな叫び声のようなものが聞こえてくる。その声にメテオラは聞き覚えがあった。それは間違いなくデボラの声だ。
「ちくしょう~! 放せよ! 裏切るなんてずるいぞ!!」
そこには群がる小さな魔法使いたちの輪ができていた。その輪の中心あたりからデボラの声は聞こえてくる。……嫌な予感しかしないけれど、このまま素通りするというわけにもいかないだろう。
メテオラとニコラスは群衆をかき分けて輪の中に入ってみた。
すると、ぽっかりと空いた輪の中心部分には五人の魔法使いの姿があった。
その五人とはデボラとアビーとマリンの月組教室三人と生徒指導のニケー先生。……そして、その月組教室の担任の先生である、メテオラ、アネットとはまた違う理由で、ずっと地下の牢獄の中に閉じ込められていた、たった一人の純血種の銀の民の生き残り、モリー先生の五人の姿があった。
あの事件の日から、メテオラがモリー先生と会うのは初めてのことだった。
デボラたち三人は地面の上に正座させられており、その横ではニケー先生が満面の笑みで口元に片手を当てて高笑いをしていた。三人の体にはきらきらと銀色に光る細い鎖のようなものが巻かれていて、その先端はニケー先生の横にいつも通りの無表情で立っているモリー先生の左手につながっている。
……その鎖は本物の金属の鎖ではなかった。
その鎖はフリコ先生の魔法によって生み出された幻想の鎖で、それに捕まったものは決して逃げ出すことができないという力を持った魔法の鎖だった。
魔法使いにとっての魔法とは、空を飛ぶことでこういった特殊な魔法は一般の魔法使いたちは使えないのだけど、悪の魔法使いアスファロットや、大魔法使いソマリお兄ちゃん、天才魔法使いマシューなど、特別な才能を持って生まれてくる魔法使いがいるように、根源の海の渦の偏りから、ある特殊な魔法の力を持ってこの世界に生まれ落ちてくる魔法使いも数人いた。
有名なところでは、ホロ先生の狼に姿を変える魔法や、メイプル先生の石化の魔眼などの魔法がある。
これらの魔法は『固有魔法とか特殊魔法』とかの名前で呼ばれることもある。
モリー先生の固有魔法は鎖。
その左手から伸びる魔法の鎖によって、モリー先生は今まで数々の問題児を捕まえてきたのだ。その鎖が今は当代きっての悪戯者であるデボラとアビーの二人と、それから同じ月教室の仲間であるマリンをしっかりと捕まえている。神妙にしているアビーとマリンはともかくとして、デボラがいくら暴れてもその鎖はまったく緩んだりはしなかった。
いつもながら見事なものだ、とメテオラはその光景を見て感心した。
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