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 ……それだけじゃない。幽霊さんは明るい時間に僕の前にあらわれた。

 無理をすれば、きっと夜でなくても姿をあらわすことが本物の幽霊さんには可能なのだ。

 メテオラは無意識に子供のころにソマリお兄ちゃんからもらった『星のペンダント』をぎゅっと握りしめていた。その星のペンダントはお守りとして、ずっと身につけているようにとソマリお兄ちゃんから言われていたものだ。メテオラはその言いつけを守って、いつもこの星のペンダントを肌身離さずに、首から下げていた。

 ……もしかしてソマリお兄ちゃんは、僕がこんな風にすごく怖い幽霊さんに狙われるという日がくることを、初めから知っているのかもしれない。そんなことをメテオラは思った。

 ペンダントを握りしめると、なんだか勇気が湧いてきた。

 メテオラは魔法学校の最上階、十三階にたどり着いた。

 本来であれば、この十三階に足を踏み入れることができたことを見習い魔法使いであるメテオラは感激しなければならないのだけど、メテオラの心はちっともわくわくしなかった。

 魔法学校の十三階には、とても冷たい雰囲気が漂っているだけだった。

 今まで訪れた魔法の森の中で、一番寂しい場所というのがメテオラの魔法学校十三階の印象のすべてだった。

 同じように普段出入りが禁止されている十階以上の階で十二階までは、(とくに魔法樹のある十一階は)そんなことはなくて、すごくあったかい感じがするのに、大きな壁一つ、階段一階分しか隔てていない十三階では、こんなに冷たい印象を受けるのはなんだかとても不思議な感じがした。

 螺旋階段を上った先には、ほかの階と同様に円環の通路があった。

 この円環の通路をぐるっと半周回ったところには、デボラとアビーが破ろうとした開かずの扉がある。

 その扉の先には封印の間があって、そこに箱は厳重な結界と一緒に保管されているはずだった。

 ……螺旋階段の周囲に人影はない。

 メテオラは暗い夜の中を足音を立てないように気をつけながら開かずの扉を目指して、無言のまま、円環の通路の上を足早に駆け抜けて行った。

 その通路を移動している途中で、メテオラは十三階の塔の吹き抜け部分がほかの階とは少し違った構造をしていることに気がついた。

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