151 異変

 異変


 ワルプルギスさんは「じゃあ名残惜しいけど、そろそろ偽物の幽霊を捕まえるんで、一旦、通信を切るね」と言った。

「はい。ワルプルギスさん。いろいろと情報をありがとうございました」とメテオラが言う。

するとワルプルギスさんは「うん。どういたしまして、メテオラくん。また、あとで会おうね」と言うが、でも通信は切れない。

「……メテオラくん。あともう一つ、私から忠告があるの」とワルプルギスさんは言った。

 なんだろう? とメテオラが思っているとワルプルギスさんはメテオラに「メテオラくん、気をつけてね。幽霊はたぶん箱だけじゃなくて、メテオラくんのことも狙ってるよ」と小さな声でつぶやいた。

 メテオラは再び驚いて目を丸くする。

 それからワルプルギスさんはメテオラに質問の機会を与えずに、そのまま通信を切ってしまった。


 そのあとでメテオラは上の階に移動して、ニコラスたちと合流しようかどうか迷った。しかし小さな女の子の魔法使いがメテオラのロープを引っ張って「上にはいかないほうがいい」と言ったので、メテオラはその女の子の意見を聞いて、その場でじっとしていることにした。

 それから少しして、ちょうど時刻が十時になったとき、「ぎゃ!!」と言う女性の声が通信機から聞こえてきた。

「よし! 捕まえたぞ!」とデボラの声。

「やりましたね、デボラくん。数日の時間をかけて、いたるところに罠を仕掛けた甲斐がありました」とマシューが言う。

「よくやった!」ワルプルギスさんの嬉しそうな声。きっと今頃、満面の笑みをしているのだろう。

「メテオラ、捕まえたぞ! 本物の偽物の幽霊だ」デボラが言う。

「おめでとうございます。デボラくん。デボラくんの仕掛けたトラップで、幽霊を捕まえたんですか?」とメテオラは言う。

「ああ。そうだよ。地下の図書館を中心にして、あらゆるところに罠を仕掛けて置いたんだ。まあ、僕にかかればこんなもんだな」

 そんなデボラの声のあとで、「じゃあ、正体を暴きますね」というマシューの声がする。

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