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 魔法使いがそこから生まれ落ちて、やがて還る場所とされる根源の海。

 それは先ほどの話の通り、小さな輝く銀河のようなものだとされている。 

 その銀河の渦が、ある一定の時間を経過すると自然と淀み始め、その流れの中に力の偏りを生み出すと、通常の力の塊を持った魔法使いよりも、より大きな塊を持った魔法使いがこの世界に誕生することになる。善も悪しもその魔法使いは天才、あるいは異端とされ、魔法使いの歴史を変えていく。

 アスファロットはそんな根源の海の偏りが産み落とした異端の天才魔法使いだった。

 アスファロットの話は禁忌とされ、その話をマグお姉ちゃんがメテオラたちにしてくれたことは、メテオラだけではなくて、ニコラスもアネットも驚いた。

「根源の海の偏りが生み出す魔法使いには森に良い影響を与える魔法使いと、森に悪い影響を与える魔法使いがいます。良い影響を与える魔法使いには先先代の大魔法使いアサツユや現在の大魔法使いソマリがいますが、その悪い影響を与える魔法使いの代表が、九年前の厄災を引き起こした張本人である先代の大魔法使いアスファロットです」

「……アスファロット」その名前をメテオラは口にする。

「ええ、そうです。少し嫌な話になるかもしれませんが、大切なことなのでよく聞いてくださいね。アスファロットは魔法使いたちの生活そのものを変えるほどの革命的な発明を生み出すことのできる『天才的な頭脳』を持って生まれ落ちた魔法使いでした。しかし、その代償として彼は魔法使いとして生まれ落ちたにもかかわらず魔法を使うことができませんでした。なぜならアスファロットの魔法力はゼロ、つまり空っぽだったからです」

 メテオラはその話を魔法書で読んで知っていた。

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