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「ちょ、ちょっと、デボラくん。怖いこと言わないでよ……。あれはあくまで噂でしょ? 幽霊なんて、この世にいるわけないじゃないか?」

 ニコラスの声は震えている。

 ニコラスの怖がりは昔っからで、今のところ、治りそうな気配は感じない。

「嘘じゃないよ、確かにあれは幽霊だった。それに見たもの俺一人じゃない。アビーも見た」デボラの言葉に「……うん。僕も見た」とアビーが答える。

「それ、本当なんですか? アビーくん」

 今度はメテオラがアビーに質問する。

「うん。見た。確かにいた。でも、場所は図書館じゃない」

「図書館じゃない? でも、噂だと幽霊が出るのは図書館、つまり今私たちがいる、この地下の図書館の中ですよね?」アネットが言う。

「ちょっと、アネットさん、怖いこと言わないでよ」ニコラスが言う。

「そうなんだよ。噂と違って、俺とアビーが幽霊を見たのは魔法学校の中。それも最上階付近の辺りだったんだ。空からだったから正確じゃないけど、あれはたぶん十二階か、十三階だな」

 デボラがはしゃぎながらアネットの質問に答える。

「うーん、いまいち話がよく理解できませんね」メテオラが言う。

「……えっと、つまりですね、要約すると、デボラくんとアビーくんはその目撃した幽霊を今度は自分たちの手で捕まえようとして、先生たちが全員出払う朝の時間を利用して、本来立ち入ってはいけない魔法学校の最上階付近に無断で侵入しようとしたんです。私とモリー先生はいつまでたっても二人が教室にこないからあちこちを探し回っていました。そしたらあの警報が鳴ったんです。するとすぐにモリー先生に緊急連絡が入りました。そういう魔法具があるんです。『通信機』って言うんですけど、これくらいの四角いチョコレートみたいな箱で、離れた人と会話ができるんです」

 マリンが会話をしながら両手の指を使って四角い形を作った。

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