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 メテオラたち四人はその栗毛の魔法使いの手前で立ち止まる。すると、すぐにその女の子が四人の前に一歩を踏み出して優しい顔で微笑むと、先頭にいたメテオラに向かって、大きくその頭を下げて、それからゆっくりと顔をあげて、にっこりと笑った。

「初めまして。私の名前はシャルロットと言います。今年見習い魔法使い卒業試験を受けるにみなさんと魔法学校の生徒で所属は太陽組になります。普段はアネット姫さまのそばについてメイドのような仕事もさせてもらっています。なので、とくに星組のメテオラくんとニコラスくんには普段からアネット姫さまがお世話になって、本当に感謝の言葉もありません。今後とも私、シャルロット共々、アネット姫様を宜しくお願いします」

 シャルロットはとても優雅な立ち振る舞いで、メテオラに自己紹介をした。

「姫さま?」

 でもメテオラとニコラスはシャルロットの自己紹介の中にあった、その言葉に食いついた。

 二人は背後にいるアネットを見る。

 するとアネットは「……ばれちゃいましたね」と小さく舌を出して、そう言った。


 アネットは魔法の森の集落で暮らす魔法使いの中で、唯一、古き森から王家の血を受け継いで生き残った王女様だった。

 そんな黄金の民の魔法使いの女の子が魔法の森で暮らしている、と言う噂は聞いたことがあったけど、メテオラとニコラスは(とくにニコラスはアネットと同じ黄金の民なのに)アネットがその王女様であることを、今の今まで全然知らなかった。

 それはその事実を必死にアネットがこの三ヶ月の間、隠していたからだった。

 でもさすがにそろそろ限界だと、アネット本人も判断をしていたらしい。自分の正体をメテオラたちにばらしたシャルロットに対して、アネットはとくになにも言わなかった。

 二人はもちろん、そのことを聞いてとても驚いたが、アネットの後ろにいるマリンには驚いた様子は感じられない。どうやらマリンはアネットが魔法の森の王女さまであることを初めから知っていたようだった。

「あ、でも、お姫さまって言っても、ただ王家の血を引いているというだけで、とくになにかがあるわけじゃないんですよ」とアネットは言ったが、シャルロットという魔法使いがアネットにメイドとしてついているという時点で、それはすでに普通の魔法使いと違うことは明白だった。

 シャルロットはそんなアネットとメテオラたちのやり取りを見て、とても嬉しそうに微笑んでいた。

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