44 魔法学校の幽霊

 魔法学校の幽霊


 それから三ヶ月の間は、とくになんの問題も起きなかった。

 メテオラは大きな岩のある分かれ道でニコラスと合流し、星組の教室でアネットと出会い、授業が始まるとマグお姉ちゃんと午前中は教室で魔法の勉強をして、午後は校庭で飛行術の訓練をして、夕方にはくたくたに疲れて家に帰ってくる、と言う毎日を繰り返した。

 その日常の中で、三ヶ月の間ずっとアネットはやっぱり用事があると言ってどこかに行ってしまって、メテオラ、ニコラスとは一緒にお昼ごはんを食べることはできなかったし、ソマリお兄ちゃんも森に帰ってはこなかった。

 ただ魔法の授業のほうは、明らかな変化があった。

 魔法の知識や筆記試験、数学などは三人ともよくできて、そのことに関しては最初から問題はなかったのだけど、空が飛べないという落ちこぼれ魔法使いの三人の実力には、最初の三ヶ月で目に見える違いが出始めていた。

 まず、アネットが一人で少しの間なら、ゆっくりと低速で、足を浮かすくらいなら空が飛べるようになった。その光景を見てメテオラとニコラスはすごく驚いたし、当人のアネットは驚いたあとで、嬉しさのあまり校庭で泣き出してしまったほどだ。

 それは明らかにマグお姉ちゃんの指導の成果だった。

 次にニコラスがアネットほどとはいかないまでも、その半分くらいの距離は一人で空が飛べるようになった。ニコラスもやっぱりびっくりしたし、メテオラもびっくりした。

 問題はメテオラだった。

 メテオラはずっと昔からマグの指導を受けていた、ということも理由の一つにあるのだと思うけど、メテオラだけは相変わらず飛行術に進歩が見られなかった。

 メテオラは空を飛ぶだけなら二人よりも長い距離を空を飛べた。……空を飛ぶだけなら。

 メテオラのそれは、空を飛ぶというよりは、やはり空の中を暴走しているといった感じで、メテオラは一人でなんども悲鳴をあげながら、いろんなところに飛び込むようにして突っ込んでいった。

 それを毎回、マグお姉ちゃんがキャッチした。

 マグお姉ちゃんの指導方法は杖に横向きで座って、空を飛ぼうとする生徒の横にずっとついて行きながら、その生徒の飛行術の補助をするという基本的なものだった。

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