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 だけどマグお姉ちゃんの場合、その指導の的確さと補助の技術が半端ではなく上手だった。本来、飛行術の天才魔法使いに指導をしてもらえるということは、本当に幸運なことなのだな、とこのときほどメテオラが感じたことはなかった。

「うわーーーーーー!!」

 という悲鳴をあげてメテオラが杖にしがみついたまま広い校庭を暴走している。

 その横には杖に横座りをしたマグお姉ちゃんがぴったりと張り付いている。これだけでも、すごい技術だ。

 メテオラは杖のコントロールができずに、右に左にと校庭の中を蛇行しながら、暴走している。

 その度に「メテオラ! 右!」とか、「しっかりと前をよく見て! もっと体重を左に移動させて!」など、メテオラの杖を手に持ったり、自分の体で強引に壁を作り、メテオラと一緒に無理やりコーナーを曲がったりしながら、マグお姉ちゃんが声をあげる。

「メテオラくん!! しっかり!」

「メテオラくん! 頑張って!」

 ニコラスやアネットも校庭の端っこからメテオラに声援を送っている。

 やがてメテオラは校庭と中庭の境にある大きな木に突っ込みそうになった。それをメテオラの杖の先っぽを自分の腕で上に持ち上げるようにして、メテオラの機首をあげさせて、そのままメテオラの先に移動して大きな木に両足をくっつけて、自分の背中でメテオラを押し上げるようにして、マグお姉ちゃんはメテオラを空の中に上昇させることで、回避する。

 メテオラが空の中に飛んでいく。

 その背中をマグお姉ちゃんが高速で空を飛んで追った。

 ……結局、そのあともメテオラは空を上手に飛ぶことができなかった。

 メテオラはひどく落ち込んだ。

 ニコラスもアネットもメテオラのことを励ましてくれたが、それでもやっぱりメテオラは落ち込んだ。

 メテオラはマグお姉ちゃんにばれないように、夜に家の外で飛行術の訓練をしたりしたが、成果はまったくといっていいほど出なかった。

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