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「そんなに落ち込まなくてもいいよ。メテオラは空はきちんと飛べてはいるんだからさ。あとは力の加減の問題。それもメテオラがもう少し大きくなれば、自然とすぐにできるようになるよ」

 笑顔のマグお姉ちゃんはふわふわとゆっくり風に身を任せるように空を飛びながら、そんな風に慰めの言葉をしっかりと大地の上に落ちないように自分の腰にしがみついているメテオラに言ってくれる。

「メテオラは努力家だし、頑張り屋さんだから、大丈夫。でも、今日の失敗はいつもよりもすごかったね。危なくメテオラのこと見失っちゃうとこだったよ。すこし本気で焦っちゃった」と言ってふふっと笑うマグお姉ちゃん。

「……すみません。反省しています」

 メテオラは素直にマグにあやまった。

「ううん。あやまることじゃない。すごいことだよ。あんなに速く、あんなに高く、あんなに遠くまで飛べる魔法使いは誰もいない。私にだってできない。それができるのはメテオラだけ。メテオラはやっぱり才能があるよ。魔法の力がすごくある。今はうまくその力を制御できていないようだけど、なにかのきっかけでコツさえつかめれば、きっと私よりも速く……、ううん、きっと世界中の魔法使いたちの中で誰よりも一番速く、メテオラは空を飛べるようになるよ。それは私が保証してあげる」とマグお姉ちゃんは言う。

 その言葉は嘘ではない。マグお姉ちゃんは本当にメテオラのことをそう評価していた。それはメテオラのお姉ちゃんとしての評価ではない。魔法学校の先生としての評価である。

「それだけじゃない。メテオラはきっと『大魔法使い』になれるよ。『ソマリの跡』を継いでさ。きっと立派な大魔法使いになれる。それがメテオラの夢だもんね」そう言ってマグお姉ちゃんはにっこりと笑った。

「……はい。努力します」とメテオラはしゅんとしながら答えた。

 それはマグお姉ちゃんの語る理想のメテオラと、今この場にいる現実のメテオラとの差があまりにも大きかったことによる激しい落ち込みだった。(なにせメテオラは大魔法使いどころか、今のところ普通の魔法使いなら誰でもできる空を飛ぶことすら、うまくできないのだ)

「うん。頑張ってメテオラ。私は誰よりもあなたのことを応援している。私はいつでもなにがあっても絶対にメテオラの味方だからね。それをどんなときでも忘れないでね」そう言ってマグお姉ちゃんはメテオラの頭を帽子越しに撫でてくれた。

 それからしばらくして、遠くの森の中に佇む黒い色をした不思議な石で作られた、まるで神話に語られるような、巨大な塔の形をした魔法学校の全景が見えてきた。

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