坂道の邂逅

伊東デイズ

第1話

 暑くて目がさめた。起きあがって台所で水を飲む。

 団地の下にあるグラウンドに、野球部員が配置についている。夏休みが終わったばかりだと言うのに炎天下にご苦労なことだ。

 たった七年前まで学校にいたのに、当時の記憶は古びたビデオを見返すようにおぼろげだ。


 病休は今日が最後だった。

 目玉焼きをつついてパンをかじって、ドパミン・ドバドバ薬(あたし命名)を飲んだ。ぜんぜん効いたような気がしない。

 窓辺からまた学校を見下ろす。陸上部の女子が走っている。ランニングハーフパンツに後ろでまとめた髪。かつてのあたしもそうだったはず。

 いまはもう残骸しかのこっていない。

 母親は遅くまでパートに行ってる。友達は就職と進学で殆ど街を出ていった。


 あたしは何をしているんだろう。こんなところで。

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