プロローグ

序章:記憶

最近ふと思い出した記憶がある。


今思えばそれは遠いようでほんの数年前の記憶。


「こらこら、泣くなよ。」


その日俺は小さな少女の頭を撫でながらそういった。


「でも、わたしがどんくさいから…。」


あれはそう、この少女がクラスの男の子にいじめられていた時だった。


少女はいつだって自信の持てない自分のことを卑下し、涙を流していた。


家族に頼ろうにも過保護な姉のことを考えて、それが出来ずただ耐えて涙を流す。


赤ん坊の頃からその少女を知る俺は、どうしてもその姿を黙って見ていられなかった。


だから


「よし、これから何かあったら俺に言ってくれ。俺が絶対に守ってやる。なんたってお兄ちゃんは正義の味方だからな。」


俺の言葉を聞いて、涙をぬぐいながらその少女は「え?」と言い、まっすぐ俺を見つめてきた。


「お兄ちゃん。ヒーローなの?」


「ああ!そうだ!みんなには内緒だけどな。」


俺は羞恥心を捨てて、腕を腰に当てて胸を張ると少女にそう言った。


「しかし、ただ守ってやるだけじゃ何も変わらない。だから少しずつお前も変わる努力をしよう。__大丈夫、お前なら絶対にできる。俺はお前が強い子なんだっていうのを知ってるから」


俺は笑顔でそう言って約束とばかりに小指を立てて彼女の眼の前に差し出した。


少女は一度大きく頷いて俺の小指にその小さな小指を絡めた。


「「約束」」

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