プロローグ
序章:記憶
最近ふと思い出した記憶がある。
今思えばそれは遠いようでほんの数年前の記憶。
「こらこら、泣くなよ。」
その日俺は小さな少女の頭を撫でながらそういった。
「でも、わたしがどんくさいから…。」
あれはそう、この少女がクラスの男の子にいじめられていた時だった。
少女はいつだって自信の持てない自分のことを卑下し、涙を流していた。
家族に頼ろうにも過保護な姉のことを考えて、それが出来ずただ耐えて涙を流す。
赤ん坊の頃からその少女を知る俺は、どうしてもその姿を黙って見ていられなかった。
だから
「よし、これから何かあったら俺に言ってくれ。俺が絶対に守ってやる。なんたってお兄ちゃんは正義の味方だからな。」
俺の言葉を聞いて、涙をぬぐいながらその少女は「え?」と言い、まっすぐ俺を見つめてきた。
「お兄ちゃん。ヒーローなの?」
「ああ!そうだ!みんなには内緒だけどな。」
俺は羞恥心を捨てて、腕を腰に当てて胸を張ると少女にそう言った。
「しかし、ただ守ってやるだけじゃ何も変わらない。だから少しずつお前も変わる努力をしよう。__大丈夫、お前なら絶対にできる。俺はお前が強い子なんだっていうのを知ってるから」
俺は笑顔でそう言って約束とばかりに小指を立てて彼女の眼の前に差し出した。
少女は一度大きく頷いて俺の小指にその小さな小指を絡めた。
「「約束」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます