レンズ越しの恋

 その日も、キミコを公園に行かせた。それは、素敵な美少年リュウに会うためだ。

「やあ、キミコ」

 とリュウは朗らかな笑顔を浮かべた。その笑顔を見るたびに、キミコはずきりと胸が痛む。キミコとリュウは既にこの公園で何度も会っている。キミコはリュウが好きだった。

 キミコはキミコをリュウの隣に座らせた。ベンチの上でリュウは微笑む。

「今日呼んだのは話があるからなんだ」

 リュウは急に声のトーンを落とした。いったい何があるんだ?

 キミコは気になってキミコに顔を覗かせた。

「急に、唐突で申し訳ないんだけど、僕はキミコさん、あなたのことが好きになってしまったみたいだ。付き合ってくれないか?」

「ふーん、ええええええ!」

 急な告白にキミコは固まる。まずは困惑の感情。そして嬉しさ。再び困惑。

 キミコはこのリュウが好きだ。しかしこの告白をキミコは素直に受け取れない。キミコはリュウが好きだ。それでも、ストレートにリュウを愛せない。

「やっぱり、僕なんかじゃキミコさんとは釣り合わないか」

 リュウが暗い口調で言う。

「いや、違うの違うの。嬉しいわ。でも……」

 キミコは固まった。そしてどうすればいいか全く考えあぐねた。

 しかし、もうどうにでもなれと言う気持ちがこみあげてきて「いや、ありがとうございます。付き合ってください」と、キミコに答えさせた。

「本当に!? 嬉しいよ!」

 リュウの喜びの声。


―――――――――


 どうしよう。キミコは悩んだ。キミコは悩んでいるが、リュウの前にいるキミコは幸せの表情を作らせた。リュウの前に居るキミコは、生身のキミコではなかった。人間に非常に似せて作られた非自立型のロボットだ。人間とほぼ同じ外見、肌をしているが、それをキミコが遠隔操作しているに過ぎない。キミコは極めて自分の容姿に自信がなく、ロボットのキミコを遠隔操作して生活していた。最近流行りの、遠隔族だ。

 付き合えばいずれキミコが生身の人間ではないことがばれる。

「どうしよう……」と、キミコは頭を抱えた。しかしモニター越しの、リュウの笑顔は、実に素敵だった。「どうしよう」キミコは泣きたい気持ちでいっぱいだった。


―――――――――


 どうしよう。リュウは悩んでいた。勢いに任せて告白したものの、自分がロボットを遠隔操作しているだけなのだとばれたらキミコさんに嫌われてしまう。告白は成功したものの「どうしよう」とリュウは泣きたい気持ちでいっぱいだった。

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