若人は空の彼方を目指す
神楽旭
第1話『宇宙を目指して』
『地球は青かった』
宇宙飛行士、ユーリイ・ガガーリンの言葉である。
彼が、そして人類が初めて、宇宙という未開の地に足を踏み入れたのは、一九六一年。旧ソビエト連邦での出来事であった。
そんな人類初の偉業から、半世紀以上が過ぎた現在。
各国宇宙機関は、『優秀な宇宙開発関連人材育成のため』と称し、既存の学科の他に『宇宙科』と呼ばれる学科を新設した。
この『宇宙科』は、宇宙開発の主役たる宇宙飛行士だけでなく、それを地上からサポートする地上管制官、飛行士を乗せるロケットを整備する整備士、飛行士の健康や、訓練における安全確保を担う航空医官までも育成する。
この『宇宙科高校』だが、一般の高校とはかなり違う。
管制官や整備士、航空医官は、普通の入試や少しの適性試験を受けるだけで良いが、宇宙飛行士志願者は、普通の入試の他に、宇宙航空開発機構JAXAへ出向し、宇宙飛行士適性試験を受けなければならない。
入試で好成績を出しても、適性試験で落とされる。そんな受験生が続出する、『入学するまでが一番辛い学校』なのだ。
「……良し。あとは適性試験だけか」
「アンタは飛行コース志望だから、JAXAに行くんだっけ?」
「ああ。あのぐるぐる回るヤツで、胃の中身シェイクされるんだ」
「エグいわねえ……。ま、あたしも飛行コース志望だったけど」
この二人、男子生徒の方は、『
昴は飛行コース受験生、遥華も飛行コースを受験する予定だったが、事情により、管制コースを受験する事になった。
「まあ、せいぜいそのぐるぐるの中で、ゲロ吐かないように気を付けなさいよ?」
「善処するよ。お前も面接でテンパったりするなよ?」
「どっかの根暗とは違うから。ほら、アンタはさっさと行く!」
「え? あっ! やべえ遅れる!」
「全くアンタは……」
やれやれと言った風に肩を竦める遥華。その様子はまるで、子を急かす母親のようだった。
「あ、あたしも行かなきゃ。アイツを急かしといて、自分は時間に遅れるなんて恥だし」
遥華も小走りで試験会場に向かった。
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