第8話

景子への土井垣一郎からの連絡は全く途絶えた。景子は安心した。やっと、別れられたと思った。

景子は穏やかな日々を過ごした。

景子は毎日何回も、自分の心に問いかけた。

一郎との肉体関係について考えていた。

結婚して15年になる。不倫に対する罪悪感が薄かった。

11月5日寒くなり始めた。

景子は寂しさを覚えた。夫に求めても、夫には疲れているからと、断られた。

夜な夜な思うのは一郎の事ばかりだった

日に何度も一郎の電話番号に掛けようとする。かろうじて自分を抑えた。景子は恋愛体質の女性だった。ドキドキ感の誘惑に抵抗できず、わかっていてもやめられない。一郎が自分の体だけを目当てにしていても、一郎が自分を愛してくれている、必要としてくれていると、勘違いして知らないうちにズルズルと一郎に依存するのだった。

11月17日景子は思い切って、一郎に電話を掛けた。

「もしもし・・・・」

「はい」

「もしもし・・・中野ですけど」

「はい」

景子は一郎が怒っているのがわかった。謝るしかないと思った。

「もしもし中野です。すみませんんでした」

「はい」

一郎は景子をじらした。

「許してください」

「はーい景子ちゃんごめんごめん。怒ってなんかいないよ。冗談だよ。からかった、だけだよ。また、楽しく遊ぼうね」

「よかった、どうしようかと思った。びっくりしたわ」

「景子ちゃんの言う軽く明るい不倫をしようね」

「そうね、私バカだったわ。会社辞めたから、一郎さんといくらでも会えるのにね」

「マイナス思考はだめだよ前向きに」

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