紅の花

祭 仁

一輪目プロローグ

 僕は君と過ごしたの思い出を忘れない。

 僕は君と見たを忘れない。

 ピッカピカの太陽の光に向けて大きく伸びる、とても強くてかっこいい花。

 煙のようにふんわり立ち上る、鼻をくすぐる不思議な香りが漂う花。

 横たわる君の隣で、全身真っ赤に染まった美しい花。

 けど、何故だろう?

 の名前はなんだっけ?

 まるでパズルの1ピースを無くしたかのように、そこだけぽっかりと穴が空いている。

 あれ、君の名前はなんだっけ?

 外れてしまったピースの後に続くように、沢山のピースが僕の頭の中からバラバラと音を立てて崩れ落ちていく感覚に襲われた。

『忘れたくない。』

 けれど、崩れ落ちたピースは戻らない。

 僕は何かを無くしてしまったことだけを覚えている。

『探してごらん。』

 誰かの声が頭に響く。

 何処を探せばいいのかは、僕の体が知っていた。

 その体に身を任せて、電車に揺られ、船に乗る。

 こうして、僕、なぎさ 風人かざとは高校生2年生の夏に旅をすることにした。

 目的地であろう小さな島が見えてきた。

────僕の旅が幕を開ける。君を探す旅。

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紅の花 祭 仁 @project0805

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