ことのは

 人は心を揺らし、それを空気の揺れに、筆先の揺れに変えて、他人の心を揺らそうとする。俺の心は容易く揺れるが、何かを揺らすのは苦手だった。それでも俺の心は揺れた。俺が心を叫んでも、誰も気に止めなかった。だからといって、言葉にしなかった感情は、誰も気付いてくれなかった。思いを描くのに、あまりにも俺たちは未熟すぎる。遥か太古の昔から俺たちは言葉を紡いできたはずなのに。どうして、どうして、人は人を圧してしまうのだろう。どうして、人は苦しむのだろう。言葉は心を伝えるか? どうして、こんなにも思わなければならないのか? 俺はなぜこんな不合理に身を埋めてしまったのか?

 それでも俺は言葉が好きだ。俺は、好きだ。

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