アイム ア ドッグ 大便 このクソ暑い世界に産み落とされた。

 何も浮かばない。 テレビが連日報道する異常気象の暑気とは違う理由で汗が出る。


 何度拭おうともジワリとべトつくような不快のそれは原因が解決していない以上は留まることを知らない。


 限界だ。 この心地よく調整された室温の室内では広い着想を得ることは出来ない。 


 ならば旅に出よう。 地獄の中に進み出て、見失ったそれを。 つまり着想を



 暑い。 暑い。 もう一度言う。 暑い。


 毎年思うことなのだが


 体中から水分が蒸発している気分だ。 このまま生きたままミイラになりそうな気がする。


 ふと靴先で何かを蹴飛ばした。 コロコロと転がるその楕円形の物体は形を崩すことなく横断歩道の白線の上に止まった。


 犬の糞だ。


 アイム ア ドッグ 大便 この腐敗した世界に生れ落とされた。 こんな場所で干からびるために生まれたんじゃない。


 節つきで頭の中に浮かんだが、そもそも生まれてないし、腐敗というか腐敗を促進するどころか一足飛びに干物にしてしまうような暑さということを考えるとこれは間違っているような気がするな。


 というよりも生きてないんだから生まれてないし、そもそも飼い主もちゃんと片付けろよ。 


 昨今のモラル低下は留まることをしりませんな。 まったく…ぷんぷん!


 って俺、何やってんの? 携帯を見たらかれこれ三十分こんなところにたちつくしてるよ。


 はたから見たら小太りのおっさんが長時間、犬の糞をじっと見つめているという光景は小学校に不審者情報として父兄の方々に回されれそうだな。


 いやむしろそこに、汗をだらだらと流し、暑さのあまりふう、ふうと荒い息を吐いてるというオプションもつけば、さらに確変倍増ですわ。


 ……もうお家にかえろう。 


 今日も何も浮かばない日でした。

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