自宅でも
普段の生活からも、忘れてはいけない注意事項。
「ただいま」
二重化の設定が終わり、牛尾は帰宅した。
「おかえりなさい」
妻の紀子の声がキッチンからする。
牛尾は今に入り、PCの電源を入れた。
その時、ちょっとPC本体が変な方向を向いているのに気がついて、ちょっと覗き込んで観た。
みると、裏にLANケーブルが見える。あれ?
牛尾の家は、マンションの一室。マンションは専用線接続がされ、各部屋にLANケーブルの差込口が用意されているている。
ただ、牛尾は、WiFiルータを使う運用にしていたので、有線接続をすることはない。そこに紀子が入ってくる。牛尾は聞いた。
「なぁ、なんかあった?ケーブルが刺さってるんだけどさ」
「あぁ、それね。今日、なんか繋がらなかったので、友達に聞いたら、無線LANってあまり安定しないから、ちゃんとケーブルでやったほうがいいよ、って言われてやってみたんだ」
あぁ、またか。前にも説明したはずなんだが・・・念のため設定を確認する。やはり。ネットワークアドレスがグローバルアドレスになっている。今、このPCは世界中から丸見えだ。。。すぐにケーブルを抜いて、紀子に向かって言う。
「いや、それはまずいんだよ。前にも言っただろ?今、このパソコン、世界中から見えちゃってるんだぜ。中には悪い奴もいて、中のデータを除いてニヤニヤしてるやつもいるかもしれない。それだけならいいけど、ウイルス仕込まれたりしたら大変だ。だから、必ず、インターネットにつなぐ時は、途中にワンクッション、ファイアーウォールと呼ばれるような仕組みをいれるべきなんだよ」
「そうだっけ?」
「あぁ。まぁあとできちんと調べてみるけど、もしかしたらなんか、やられているかもしれない。でさ、無線LANを使うことは、ケーブルがいらないから、と言う意味でやってるんじゃないんだよ。家の中のネットワークが世界から見えないようにする、その、ファイアーウォールみたいな役目を、ルーターっていうのにやらせるんだけど、そのルーターで無線も飛ばすようにしている。だから、無線にするのが目的ではなくて、インターネットから見えなくするのが目的なんだよ」
「まぁ、よくわかんないけど、もういい。わかった」
紀子は、いつもこう言う話になると不機嫌になる。『わかんないけどわかった』とう意味不明な言葉を残して、キッチンに戻っていった。
やれやれ、、、しょうがない。
まさか自分でケーブル挿して、なんてやるとは思わなかったんで、油断していたけど、やはりちゃんと対応しておかないと。
その週末の土曜日に、牛尾は電気スペースを空けて、配線をちょっといじり、居室内のどこのLANソケットに挿しても、ルータ経由になるように、簡単に工事を行った。最初からやっておけばよかったけど、まさかこう言うことになるとは想定していなかった。このマンションの住人って、みんなあまり気にしていないのかなぁ。管理組合でもセキュリティーに対しての問題が話題になることは一度もなかった。多くの家庭が無線LAN、WiFiにしている模様だし、まぁ、その意味では多くの世帯が、知らず知らずのうちに、安全な設定になっているのだろう。牛尾が心配しても始まらないし。
それにしても、WiFiの電波は、本当に各世帯が各々設定しているからだろう、スキャンすると凄まじい量のSSIDが表示される。多くが、買ったままの設定のままだけど、まぁそれは良いだろう。流石に今時のルータだ。機種名にMACアドレスが組み合わされた名前。辞書攻撃対策がされている。牛尾は、SSIDは自分の決めた名前をつけている。辞書に出ていない言葉を選んでいるが、あまりに牛尾自身のニックネームとわかり、ちょっと恥ずかしいので、ステルスにしていたが、最近はやめた。そもそも、リストが大量に表示されるのを、軽減して喜ぶのは、自分以外の人。自分にメリットはない。しかも、自動接続設定しているので、四六時中、そのビーコンを撒き散らすことになる、特にモバイル機器。
会社でも、すでにIT担当ではない。ましてや、家に戻ってまで、あまりこう言うことに煩わされるのは面倒くさい。まぁ、もういいや、あるがままで行こう。
その日の夜、夕食を食べながら、ちょっと聞いてみた。
「この前のケーブルの話だけどさ、自分でやったの?」
「ううん、長谷川さんと電話で話してて、彼女、詳しいのよ。それで来てくれて色々やってくれたの」
「色々って?他にもなんかやったの?」
「なんかよくわかんないけど、そうみたいよ。クッキーがなんとか、とかいってたな」
げぇ、、、やられたか。平静を装いながら、食事を終わらせ、PCの前に座る。
「おい、紀子のIDでログインするぞ」
二人の間で、メンテナンスを任されている以上、パスワードは一応教えてもらっている。本当はまずいのだろうけど。
ログインして、Webブラウザの設定を見る。やはり。。。
Cookieをブロックする設定になっている。設定を一通り確認し、食卓に戻る。
「お茶がはいったわよ」
と紀子がだしてくれる。
「おぉ、サンキュ」
と受け取りながら
「さっき、クッキーとか言ってたじゃん、あれ、みといた」
「ふーん、、、」
特に興味がないらしい。これ以上説明してものれんに腕押しだ。諦めた。一言だけ伝えておく。
「Cookieってさ、設定や閲覧方法を間違えると、個人情報を抜かれることがあるんで、セキュリティー上問題だ、って騒ぐ人たちが結構いるんだけどさ、実際には正しく使って入れば、個人情報は抜かれないし、なによりも、セキュリティーを確保したサービスを使いたかったら、Cookieを使ったセッション管理ってのが必要なんだよね。なので、戻しといたから」
応答がない。これ以上やめた。
まぁ、世間的には感情的に色々と言う人たちがいるけど、みんな良い大人なんだし、自分で考えて判断してもらえばいい、最近はあまり色々口を出すのは控えるようにした。
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