坂道はまだまだ遠く
若狭屋 真夏(九代目)
余命宣告
私有川千佳は17歳の高校生だ。青春とは過ぎ去った人間からすると「美しいガラス細工」のように例えるらしいけど私はちがった。それは病気のせいだ。
病気が発見されたのは小学生の時だった。脳に腫瘍が発見されたからだ。
それから私は検査のたびに病院を訪れたが病院の消毒薬のにおいとあの重い空気が好きではなかった。
そして今日両親と私が主治医の元を訪れた。
CTの画像を見ながら医者は苦い顔をしている。
「どうも千佳さんの成長と同時に腫瘍のほうも大きくなってきてますね。早めに手術を行ってもらったほうがいいと思います」
「で、手術をした場合娘は助かるんですか?」と聞いたのは母の再婚相手で「ガーさん」こと有川隆だ。
「もちろん最善は尽くすつもりです。しかし危険が伴うのも事実です。もしかしたら後遺症が残るかもしれない。」
「手術をもし受けなかったら?娘の命はどれくらいですか?」母が訪ねる
「一年、以内かと。。」
それを聞くと母とガーさんは泣き崩れた。
私は意外なほど淡白で「ああ、来月のコンサートには行けるからいいや」って内心思っていた。その時はそんな感じだった。
それが夏休みが終わるころの話だった。その日は入道雲がすごかったので母たちと別れて一人で家まで向かうことにした。
暑いけどこの暑さを感じられるのも残り一年。途中公園によって入道雲を眺めていると頬を涙が伝わってきた。手て何度もぬぐっても涙は流れてくる。
「なんだねえちゃん、失恋でもしたのか?」という言葉が私に投げかけられた。
40代のホームレス風のおじさんが立っていた。
「失恋なんて時間が立てばいい思い出になるさ」とおじさんは言っていた。
なぜかその一言に安心がまた流れてくる。
「お、おいねえちゃんどうしたんだ?」
それがエイちゃんとの初めての出会いだった。
私は今までの事をすべてエイちゃんに話した。今思えば不思議だったけどエイちゃんは何も言わずに聞いてくれた
聞き終わると「17なんてまだまだいろんなことがあるんだよ。未来なんて誰にもわかりゃあしないんだから安心して親御さんと話してみるんだよ」
そういうと自販機からオロナミン©を買ってきてくれた。
私はその味を忘れることはできなかった。
坂道はまだまだ遠く 若狭屋 真夏(九代目) @wakasaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。坂道はまだまだ遠くの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます