異世界英雄譚
九条晴彪
第1話 手違い
春。私は大学4年生になった。正直これと言ってやりたい事はない。一応医学部に入っているが医者になりたいと言う訳でもない。ただ、親が入っておけと言われたから。今年私は22歳。恋愛も上手く行かない。ついこの間、振られたばかりだ。振られた理由は私が思ったよりもつまらなかったから。別に腹を立てる物でもない。
「…ただいま」
「おかえり、弥生。私、これから会社行くわね。ご飯は冷蔵庫にあるから」
「行ってらっしゃい」
私の日常。それはとてもありきたりでつまらない。朝起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝ごはんを食べて、着替えて、大学に行く。大学に行っても友達やサークルに入っていないから特に楽しいことなんてない。
あんたの感情は死んでいる。昔、クラスメートに言われた。自分でも思う。人が喧嘩しても泣いてても怒ってても何も感じない。父親の葬式でも泣くことはなかった。
ああ、死んじゃったんだな。それしか思わなかった。
大学からの帰り道。携帯のバイブで私は画面を見た。すると、母親から夕飯は買って食べるようにと一通のメール。
……コンビニよろ。
「いらっしゃいませー」
コンビニに入り、私はかごを手に取った。そしてコンビニ弁当をかごに入れ、なんとなくお酒が飲みたくなり、ビールを1本入れた。いつもはお酒なんて飲みたいと思わないのに今日は飲みたくなった。
「あ、あと肉まんお願いします」
「ありがとうございます」
そう言って店員さんは3つあった肉まんの一番手前をとった。
「以上3点で580円です」
財布を開いて1000円を渡した。おつりをもらい、荷物を持ってコンビニを出た。夕焼けもなくなりそろそろ夜も深くなってきた。コンビニから家まで20分かかる。そこまでに少しトンネルがある。薄暗くて不気味な雰囲気がある。
トンネルに入って少し経った時、私は誰かとぶつかった。
……あれ。なんか背中が熱い。
背中に手を当ててみると、赤い液体が流れていた。これは血だ。
「弥生ちゃん。これで君は僕の物だ!!」
後ろを振り返ると、そこにはさっき行ったコンビニの店員さんがいた。
そしてまもなく私の視界はぼやけ、そのまま倒れた。
―――
「……ねえ君!起きて!!」
目を開けると、そこには黄緑色の髪をした女性がいた。
「ここ、どこ」
「ここはねぇ、私達の住んでる天界だよ!」
「誰」
「私はミスティ!大地の女神っでーす!」
随分軽いな。
「そっか。私、死んだのね」
そう言うと、もう一人の女の子が私の顔を覗き込んできた。
「随分と冷静だね」
その女の子はピンク色の長い髪をしていてパーカーを着ていた。
「あー、悪い。お前、さ。申し訳ないんだけど、俺達の手違いで死んじまったんだ」
「ごめんね。お詫びと言っちゃあなんだけど、生き返らせることにしたよ!!」
「元の世界に。って訳じゃないよね」
「そりゃあね。さすがにそんな事したら他の神に殺されちゃうよ」
へえ、神様って死んだりするんだ。
「あ、今神様って死ぬんだとか思っただろ」
「まあ、うん」
そう言うと、私は魔法陣に立たされた。
「さて質問です。転生と召喚どっちがいい?」
「何が違うの?」
「転生は赤ちゃんから。召喚はそのままの姿で異世界に飛ぶんだ」
「召喚の方で。あ、姿を変えてもいい?」
「もちろん!どんな感じにする?」
歳は15歳位で見た目はそのまま幼くした感じにしてほしいとお願いした。
「はい!じゃあ、いってらっしゃーい!!」
そう言うと、私は光に包まれた。
異世界英雄譚 九条晴彪 @harutora_suki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界英雄譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます