第28話 とある軍人の来歴

雄三たちが出発してから五日後の静岡新聞に、ある記事が載った。


暴徒がマッカーサー暗殺を画策か。


暗殺は未遂に終わり、三名が逮捕された。


男たちは武器弾薬を隠し持っており、連合国軍総司令官ダグラスマッカーサーを暗殺する計画を練っていたと思われる。


首謀者は、陸軍将校を自称する田中某という男である。


「日本が財団の手に渡る。妖夷を滅殺し、主権を取り戻す」などと意味不明の供述をしており、精神錯乱が疑われている。


進駐軍の取り調べによると男が兵役についた経験はなく、将校というのは偽りだという。男は生まれつき心臓が弱く、兵役に付くことができなかった。国に尽くしたい気持ちは人一倍あったにも関わらず望みは叶わなかった。結果鬱屈し、軍人ごっこにのめり込むようになったのではないかというのが進駐軍の見立てである。


田中某が妄想と現実の区別ができない人物かはさておき、危険思想と武器は現実の脅威である。


進駐軍は武器の出所と共に他にも協力者がいなかったかどうか調査中だ。

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