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「マスターはヘアドネーションってご存知ですか?」
小さな宝石を耳元で揺らしながら彼女が訊いた。
「ヘアドネーション、ですか?」
ん~ヘアって付くくらいだから髪の毛に関する何か、か? 髪を短くしたのにも何か関係がある、とか?
「切った髪の毛を寄付すると、病気の子供たちのウィッグにしてもらえる活動なんです。まだあまり知られてはいないみたいなんですけど」
「そんな活動があるんですね。知りませんでした」
献血や募金なんかは大した量や金額じゃないけれどしたことはある。でも髪の毛の寄付があるなんて初耳だ。
「私も最近初めて知って、正直悩んでいたので髪を切るいいキッカケになりました。そんなに出来た人間でもないんですけれど、私の髪が誰かの笑顔になるんなら、いいかなって思って」
「素敵な事ですね」
自慢の髪を寄付するなんて、きっと贈られた子供も喜ぶに違いない。だってとても美しい髪だったもの。
「いえいえそんな」
「そんな、謙遜なんてしなくても」
「いえいえいえ」
そう言って彼女は首を振る。髪がフワフワと浮いた。
「本当、動機は不純なんで」
「え」
動機は不純? そう言えば悩んでいていいキッカケになったって言ってたっけ?
彼女の顔を見るとちょっとだけ決まりが悪そうな可愛い顔で言った。
「実は、気になっている人に」
「人に?」
「首が綺麗だねって言われて」
「くび」
「だったら短い髪の方が首、が目立つかなぁと思って」
・・・なるほど。だから悩んでいた、んだね。いいじゃない、それがキッカケだったとしても誰かが笑顔になるのならさ。
「可愛い人ですね」
「そうだといいですけれど」
「可愛いですよ」
髪を切った理由も、そう言う顔も。
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