海風

勝利だギューちゃん

第1話

僕は、列車に乗っていた・・・

海岸沿いを、カタコト走る、ローカル線・・・


僕は、普段は都会に住んでいる。

とても、ゴミゴミしている。


「都会には空がない」と、偉い人が言っていたが、本当だ。


嫌気が差していた。

おそらく、多くの都会人は、そう思っているだろう・・・

でも、仕事なり学校なり、そして家庭なりと、

多くのものを抱えているために、我慢している。


それに、一度便利な生活に慣れてしまうと、元には戻れない。

昔はなくても平気だったのに、退化しているのかもしれない・・・


僕も、そのひとりだった。

でも、いつか飛び出したいという気持ちは、常にあった・・・


そして、気が付いたら、飛び出していた・・・

どうやって、乗り継いで来たのかは。全く記憶になかった・・・


「老化現象か・・・」

まあ、それでも良かった・・・


ボックスシートに腰を下ろし、車窓を見る・・・

海は見えるが、もう秋なのか・・・

人は少ない・・・


ここで、「若い女性がやってきて、偶然の出会いでひとめぼれ・・・」

なんてことは、期待していなかった。

ていうか、無い方がよかった・・・

案の定、起こらずに、駅を降りる駅に着いた・・・

無意識のうちに買った切符は、この駅までらしい・・・


駅舎を出ると、全面に海が広がっていた。

僕は、人気のない海が好きだ・・・


浜辺まで行き、腰を下ろし海を眺める。

吹き抜ける海風が、冷たいが逆に心地い・・・


「あなたは、何のために生まれたの?」

えっ?

「何をして、生きているの?」

えっ

「答えて・・・」

辺りを見回すが、誰もいない・・・


(空耳か・・・)


そんな歌詞のヒーローがいたが、確かに答えられない・・・


財布を見てみた・・・

「もう少しあるな・・・」


僕は、旅を続ける事にした・・・

探しに行こう・・・その答えを・・・



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海風 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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