第45話 守り続けるから

色々考えていたら深夜0時になってしまった。


やばい!


僕は睡眠はよく取らないといけないのに。


────チュンチュンチュンチュン


すずめが鳴いている。


「お……き……ろ! 起きろ! 権太ごんた! ふんぬ! 」

権蔵が僕にタライを落とした。


───ガーン


「何するんだよ! 」


「今何時じゃと思ってるんじゃ!」

僕が時計を見ると、14時だった…………


スマホを見ると山のように笹野さんから電話とTOINがあった。


「権蔵なんでもっと早く起こさないんだよ!」


「お主の問題じゃろうが!わしも寝過ごしたのじゃ」

僕は走った。桜並木のある公園まで。


笹野さん……もう帰ったかもな。

到着すると笹野さんがいた。


「おそい! 権太くん! 何してたんだ! 」

笹野さんに、めっちゃ睨まれた。


「ご、ごめんなさい! 寝過ごしました! 」


殴られるか怒られるか…………


「もう来ないんじゃないかと思ったぞ…………」

そう言うと、笹野さんがやさしく僕の胸に頭をゴツンとしてきた。


そうか。4時間僕を信じて待ち続けてくれたんだ。

僕はそのまま笹野さんを抱きしめた。

なんだかいい雰囲気だから僕はそのまま笹野さんに、キスをしようとした。


すると、上からタライが落ちてきた。


「痛っ! 」


「そこまでじゃ! ちょっと引っ付きすぎじゃないかのう? 」

権蔵が僕を睨む。


「何するんだよ! 」


「わしの娘の生まれ変わりじゃぞ! いわばわしは父親じゃ。父親の目の前でよくそんなことできたな」

そういえば、笹野さんは、権蔵の娘雲母きらら様の生まれ変わりだったな。


今までの方がいちゃつけたのに…………


厄介だな。しかも桜は咲いておらず寂しい感じだ。


ここでプロポーズは無理だな。


「あの…………これ…………」

僕は花束を笹野さんに渡した……


「くれるのか? ありがとう」

笹野さんは少し戸惑っているようだ。


「今からデートするのに花束なんかあると邪魔ですよ」

はこべさんが僕にはっきりと言った。


「そうなのか…………?」

全然わからなかった。


「いいんだ。権太くんの気持ちが嬉しい」

なんか笹野さんこないだのことから僕にやさしくなったよな。


もう笹野さんをおびやかす人はいないんだもんな。


僕達はファミレスに行った。

お昼時だからかすごく並んでいた……。

車がないから移動できない……。


「私の行きつけはどうだ? 」


「そうですね。笹野さんお腹すいてるでしょうし」

僕がそう言うと、笹野さんはどこかに電話した。


「空いてるらしいぞ。私の車で行こう」

僕達は笹野さんの車がある駐車場に歩いていった。


僕は助手席に乗ってシートベルトをした。


もしやプロポーズのチャンスでは……!


「そろそろどうでしょうか? 」

僕はとっさにえにしのプロポーズの言葉を使った。


「まだ着かないぞ。あと10分ぐらいかかる。お腹空いたか? 」

笹野さんには通じなかったようだ。


「えーと……だから……」

僕にはもう1回言う勇気はなかった。


「着いたぞ」


考えているうちにお店に着いたようだ。

ってどう見ても料亭なんですけど……!


「どうも。いつもご贔屓ひいきになさって下さりありがとうございます。こちらの部屋へどうぞ」


僕達は店員さん……たぶん女将に大きな和室の部屋に案内された。


生け花があり、掛け軸もあり、ししおどしが外にあった。


僕は緊張して食事の味を覚えてなかった。


「心配するな。支払いはもう済ませてある」

ああ、よかったって男なら奢らないと……


ここは僕には無理そうだ。


今回だけご馳走になっておこう……。


今ならプロポーズの言葉を言えるかも。

「笹野さん……!


「なんだ? 」

僕は笹野さんの顔を見つめた。


「味噌汁が飲みたいです」

僕はしっかりと言った。


すると笹野さんは店員……たぶん女将を呼んだ。


「味噌汁1つ追加で」

ちがーう! 笹野さん『』が聞こえてなかったのか。


笹野さんの車で映画館へ向かった。


「今の時間は『妖怪ゾンビ霊祭り!』しかやっておりません」

映画のスタッフさんは、にこやかに言った


「じゃあそれで……」


「ちょーと待つのじゃ! 」

僕がそれにしようとすると、権蔵が騒ぎ出す。


「わしと権太は一心同体じゃぞ!そんなもの見たくない」

相変わらず霊のくせしてホラーが苦手なんだから。


「はこべも嫌じゃろ? 」


「私は平気ですが? 」

はこべさんはあっさりと答えた。


「笹野さんは大丈夫ですか? 」


「大丈夫だ」


僕は笹野さんに確認した。


「多数決で決定な。ここにいる大人4枚ください」

僕は映画のスタッフさんに言った。


「えっお客様……」

スタッフさんは困っているようだ。やってしまった。

権蔵達は他の人には、見えないんだった。


「いえ。間違えました。ふたり分ください」

僕は映画のチケットをふたり分を買った。


「うぎゃー」

権蔵は映画が始まると怖がって叫び出す。


「…………」

対称的に笹野さんは静かに冷静に見ていた。


ゾンビをやっつけるシーンになると、笹野さんが手を握ってきた。


今プロポーズのチャンス到来か!


「笹野さん! 結婚しましょう」

ありきたりだけど、ストレートに行こう。


「うぎゃー」

愛長つぐなが様落ち着いてくださいまし」

権蔵達は相変わらず騒いでいる。


「えっ? なんだって? 」


「笹野さん! 結・婚・し・ま・し・ょ・う」

僕は大きめの声で言った。


「ぎゃあー」


「愛長様深呼吸です!ヒーヒーふー」

はこべさんそれ。妊婦さんにやるやつだ。


「聞こえん。後で言ってくれ」

ゾンビが撃たれるとまた笹野さんは手を握ってきた。


映画館を出ると権蔵が泣いていた。


「おーよしよし」

はこべさんが権蔵をなだめている。


権蔵を少し休ませてから行くことにした。


「笹野さんああゆうの苦手でしたか?」


「大丈夫だが実は好きではないな。特にスプラッタ系は」

要するにスプラッタ系は苦手ということらしいな。


「知らずにすみません」


「いや、自分で選んだのだからいいんだよ」


「わしは強制だったけどいいのか!?」

権蔵はまだ泣いていた。


しばらくして僕達は高校に向かっていた。

途中で僕達が最初出会った道に来た……。


「ここで私達は出会ったんだな」

笹野さん……蔵子くらこさんは今までずっと僕を守り続けてくれたんだな。


「笹野さん! 今度は僕が守ります……命をかけて守り抜きます! だから一生そばにいてください! 」

僕は真剣に、笹野さんを見つめた。


「先言われちゃったな。はい。もう一生離れない」

やったあ。笹野さんがプロポーズをオッケーしてくれた。


「わしは許さんぞ!」

「愛長様!」

権蔵は腕組をして機嫌が悪い。


「もともと権蔵が笹野さん……初恋の人と結婚しろって言ったのが始まりだろうが! 今更何言ってるんだ? 」


「それはわしの娘の生まれ変わりと知らんかったから……」


権蔵は複雑な気持ちのようだ。

やっぱり前世とはいえ笹野さんの父親だもんな。


「お義父さん、お義母さん、娘さんをください」

僕は権蔵とはこべさんに、向かってその場で土下座した。


「なにあれ~?」

「どうして何も無いところに……」

周りが何か言ってるけど構わない。


「分かりましたから……橘さん顔を上げてください! 」

はこべさんは困っているようだ……


「権太くん!何もここでしなくても……」

笹野さんがしゃがんで僕の顔を見た。


「あー! もうわかった! 結婚せい! もともと坂田真太郎……もとい橘権太以外の奴にはやらんつもりじゃった。


よかった。やっと父親権蔵に認められた。


「あとこれ、何回もしないといけないが大丈夫か? 」

笹野さんがひそひそと僕に言ってきた。


「あー。笹野家の両親と小豆沢あずさわ家の両親か……」

つまり笹野さんには父親が笹野家、小豆沢家、前世で3人いるんだな。


片岡あやめさんもパパが3人いるらしいが、笹野さんとは意味合いが全然違うなあ。

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