第6話 対立と協力!
後ろから誰かが来る気配がして僕は蔵子さんから離れた。
「蔵子……どうしたんだよ?橘さん一体何をしたんですか!?」
「蔵子大丈夫?」
「大丈夫よ」
蔵子さんはにっこりと言った。
「僕が蔵子さんのことを諦めると言ったら泣き出したんです」
僕がそう言うと今猿さんが僕の腕を掴んだ。
「橘さん。ちょっとこっちへ」
今猿さんに連れられ僕は別室へ行った。
「橘さん!蔵子を刺激するなと言いましたよね…?」
今猿さんが焦っている。
「今猿さん。お言葉ですが蔵子さんが僕のことを乗り越えて心の傷を癒した上で一緒になりたいと以前言われましたよね?それに僕は自分の思いをぶつけただけです」
僕は今猿さんの目を真剣に見据えた。
「僕もそう思っていましたけど、状況が変わったんですよ! 何も知らない方が幸せなんです! 」
今猿さんが僕を睨む。
「蔵子さん本人は知りたいと言ってました!本人の意見を尊重するべきでは?蔵子さんが僕の記憶を思い出してしまうのが今猿さんは嫌なんでしょう?」
僕も負けずに今猿さんを睨む。
「そうですよ! 僕も人間だ! 僕だけに微笑んでくれる蔵子を見て欲が出たんです。もう離したくないんだ!邪魔しないでください」
今猿さんは必死に言った。
「僕だって蔵子さんを離したくないんです! 蔵子さん以外の人なんて考えられません! 」
僕も必死に言った。
「それは蔵子の記憶がある時に言えば良かったんじゃないですか? 蔵子のことをダラダラと放っておいたのは橘さんじゃないですか? 」
今猿さんに僕は痛いところをつかれた。
「だから今、後悔してるんです。蔵子さんは記憶はないですが心の奥ではまだ僕を想ってます。蔵子さんの気持ちを無視していいんですか? 」
僕がそう言うと、今猿さんが悔しそうな顔をした。
「それでも今、蔵子の恋人は僕なんだ!橘さんと意見が合わなくて残念です」
今猿さんがそう言うと、如月さんが呼びに来た。
「蔵子はだいぶ落ち着いたみたいよ」
僕達は蔵子さんがいる部屋に向かった。
「大丈夫か? 蔵子」
今猿さんが蔵子さんに駆け寄った。
「なんともないよ。誠。ありがとう」
蔵子さんが今猿さんに、にこやかに微笑む
その光景を見ると僕は胸が痛い……。
このしーんとしたこの空気も痛い……
「じゃあ私は橘さん送ってくるね」
如月さんはそう言って僕に目で合図を送る。
「じゃあ僕は帰ります」
僕もそう言って、蔵子さんを見た。
「お気をつけて」
蔵子さんはにっこり微笑んだが、さっき『待て』と言った表情とは違い、僕のことを覚えてない蔵子さんの目だった。何も思い出してもらえなかったことが悲しい。
僕達は今猿コンサルティングの駐車場に来た。
「わざわざ送ってもらってすみません」
僕は如月さんに申し訳ないと思った。
「いいよ。橘さんに丁度話したいことがあったし」
如月さんが車のロックをボタンで開けながら言った。
ああ、如月さんにも、また蔵子さんを刺激するなと怒られるんだろうな。
僕は如月さんのピンクの車の助手席に乗った。
「わしはいつまで黙っておれば良いか?」
権蔵が後ろの後部座席に乗って言った。
「もうしばらくだ」
僕は静かに権蔵に言った。
「えっ?」
如月さんが驚いている。
「ああ、権蔵に言ったんですよ! 」
僕は如月さんに慌てて言った。
「あっ権蔵さん。後部座席荷物多いので狭いでしょうけど我慢してね」
如月さんが笑いながら言った。
「えっ?なんで後部座席に座ってるってわかったんですか? 」
僕は権蔵がいるとしか如月さんに話していない。
「他に座るところないからそう思っただけよ」
如月さんが笑いながら言った。
「それで話したいことってなんですか? 」
僕が緊張しながら如月さんに尋ねた。
「私はやっぱり橘さんに協力するわ」
如月さんが運転しながら言った。
「えっ?」
僕は如月さんの言った言葉の意味が分からなかった。
「橘さんの記憶を思い出して、橘さんと蔵子が上手くいくように手伝うわ」
如月さんがハンドルを右にきり、右折しながら言った。
「こないだはダメって……」
僕は如月さんの言葉に驚いた。
「私、実は2人のこと隠れてずっと見てたのよ。誠が来て、邪魔されたけど。やっぱり蔵子は心の奥底では橘さんのことを好きみたいね。いつか記憶を取り戻した時に蔵子と橘さんが後悔するじゃないかって……思ったの。そして、誠も後悔する気がしたの」
如月さんは考えこんでから言った。
如月さんにさっきの会話をずっと見られていたのか……。
「ありがとうございます」
僕は味方が増えてホッとした。
「まずは縁くんから話を聞いてみたらどうかしら? 顔が広いから力になってくれるはずよ」
如月さんが今度はハンドルを左にきり、左折しながら言った。
「そうですね!まず縁から話を聞いてみます」
僕は
縁だけは蔵子さんを苦しめたやつだと思いたくない
しかし、10人の中に入った以上は調べないといけない。僕は縁を調べる決心をした
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