私なんかでも、親になれるのかな

黒巣真音

第0話 はじめに

半年前、私は息子を出産した。もう半年前なのかという気持ちと、まだ半年しか経っていないのかという気持ちが半分ずつ、というのが素直な感想だ。

半年前の今頃は、病室のベッドの中で「やっと終わった」「頭が痛くて眠れない」「凄い静かだけど生きてるよね?」などと思いながら、眠れずにいた(深夜1時)。


それで、だ。

半年間、毎日、ほとんどろくに休むことなく、息子に私のほぼ全て(母乳育児だから、文字通りだと思う)を割き、誠心誠意、真心を込めて息子のお世話係として引きこもっていると(今年の夏は酷暑で、赤子を連れて出歩けたもんじゃない)、どうにも自分を構成する要素が、息子だけになってしまう気がした。今はそれでもいい。何せ彼は一人では何も出来ないのだから。けれどこれが常態化されるのはマズイと思った。常態化されればいずれ『子離れ出来ない親』になりかねないと思ったのだ。息子に依存してしまってはいけない、と。

だから、筆をとった(実際は何も考えずにスマホのメモ帳を開いた)。息子以外にも自分の構成要素を持った方がいい。それなら趣味を。どうせなら、エッセイ(のようなもの)でも、書いてみるか、と。そんなわけで、見切発車で書き始めた、この先どう進むかもわからない、エッセイ(のようなもの)を書いていこうと思う。


書き始めるにあたり、ごく当たり前のことなのだがいくつか前提としておきたいことがある。この文章は過去の事実に基づき、私の主観で書かれることになる。しかも、妊娠発覚のころから時系列で書いていくつもりだ。おそらく、すっぽり記憶が抜け落ちている部分や、事実を捻じ曲げて記憶している部分、あるいは、私自身にとって都合のいい表現になってしまう部分も出てくるだろう。もし、私と近しい関係の方々がこれを読んで不快になられても、これが私の中の事実だとして受け取ってもらえると幸いだし、不快にさせようと思ってこれを書き始めたわけではない、ということを覚えておいてほしい。

また、これは基本的に備忘録のようなものだ。私の中に居た生き物が世の中に出てきたことの記録だ。自分から、ぜひ読んで読んで!と言うつもりは毛頭ないけれど、知ってくれたらとても嬉しい。

そして、これは超個人的な私信なのだけれど、旦那へ。生息する界隈がほぼ一緒であるから、もしかしたら目にするかもしれないけれど、生ぬるい目で見てほしい。赤裸々に書く場面があるかもしれないけれど、大目に見てくれると助かる。


さてでは、前置きはこの辺にして、妊娠に気付いた前後の話から始めようか。

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