30p

 幸一は、空の小包を手に持ち、両手でそれをクシャリとつぶした。


 部屋は静かだ。


 とても、とても静かだ。


 何事も無かったかの様に、聖夜にふさわしく、静かだ。




 だから幸一は気が付かない。

 彼のすぐ後ろに、白目の女が立っている事に。

 彼女は、首を後ろに反らせた状態でゆらゆらと動いている。

 彼女の足下には、黒く長い美しい髪が散らばっている。

 彼女からは微かにシャネルの№5の香りが香っている。

 彼女は細い指を幸一の首にゆっくりと伸ばす。

 その事に幸一は全く気付かないでいた。





 カサリッ……




 彼女の足下の髪が小さく、小さく音を鳴らす。





 カサリ……



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