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『…………ナニカ気ガツ……キマセン……カ……』


 ナニニ?


「何に気付いていれば良かったんだ!」

 幸一は立ち上がり、叫ぶ。

 幸一の叫びに答えるかの様に部屋に再び明かりが戻った。


 静かだ。


 部屋は静かだ。

 幸一が呼吸する音以外は何も聞こえない。

 幸一は、目だけ動かし、テーブルの上の小包を見る。

「!」

 幸一は目を見開いた。

 テーブルの上に小包は変わらず載っていたが、その中身が消えていた。

「髪が無い! どうなって……」

 幸一はテーブルに近づき、空っぽの小包を凝視する。

 髪は一本残らず消えていた。

 まるで、初めからそんな物など無かったかの様に髪は姿を消している。

「俺は悪い夢でも見ていたのか? しかし、包みはあるよな……」

 しばらくぼんやりと空の小包を眺めていた幸一だったが、落ち着いて来たのか、ため息を付き、深く頷いた。

「そうだ、そうだよな……夢……夢だったんだよ! 髪なんて送られて来なかったんだ。夢で無ければ何かの間違えで……きっとそうだよ」

 幸一は安堵の表情を浮かべる。

(香美代に電話しよう。浮気の事を謝って、戻って来てもらおう。大丈夫、きっと許してもらえる)

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