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音だ。
テーブルの方から音が聞こえる。
「?」
幸一はゆっくりとテーブルに近づく。
テーブルはさっき幸一が確認した時と何ら変わらない。
幸一はテーブルの下も見てみる。
しかし、テーブルの下にも音を立てる様な物は何も無かった。
「どこかに虫でもいるのか?」
そう思ってテーブルの上を再び見る。
しかし、見た限りでは、虫も何もいない様だった。
幸一は小包を目を細めて見る。
(この小包の中に、髪と一緒に……まさか?)
髪に紛れてグロテスクな虫が蠢いている様子を想像して、幸一は、うえっ,と声を漏らす。
「ああっ! 嫌だ! 嫌だ! この髪も浮気も、もううんざりだよ! 家族もいないし、上野君さえいなかったら外にでも飲みに行きたいよ!」
確かに、気を失っているまゆみを一人残したまま外出する訳にはいかないだろう。
幸一は、ソファーでぐったりしているまゆみを恨めしそうに見ると、ため息をついて再び浮気相手の事について考える事に集中する。
幸一は、秘書課のマドンナ、蒙葉つむぎの顔を思い浮かべていた。
つむぎは秘書課のエース。
仕事はそこそこだが、人心掌握に長けていて、それを武器に会社での確固たる地位を手に入れていた。
幸一との関係は、つむぎの方から求めて来た。
つむぎは社での地位を固めるためには何でもする女だったから、幸一の事も、利用出来る駒を増やす目的で近づいたのだ。
つむぎが他の女子社員から、女狐と陰口を吐かれている事を幸一は知っていた。
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